溺愛王子サマ達と秘密の同居

「りんくん、俺じゃだめ?」

「え……」

 そんなふうに言われたら、だめなんて言えない。
 でも、どう答えればいいのかわからなくて言葉につまる。

 すると次の瞬間、玲央がわたしの反対の腕をつかんだ。

「こいつは俺が見る」

「だからそれがずるいって言ってるの」

「うるさい」

「りんくんの気持ち、ちゃんと聞いた?」

 そのひとことに、玲央の眉がぴくっと動く。

 るいは笑顔のままなのに、その奥にうっすら拗ねた色が見えた。

「俺だって、りんくんと仲よくなりたいのに」

「……るい」

 わたしが名前を呼ぶと、るいははっとしたようにこっちを見る。
 その顔が、ほんの少しだけ寂しそうで。

 なんだか急に、放っておけない気持ちになる。

「ご、ごめんね」

「りんくんが謝ることじゃないよ」

「でも……」

「ただ、玲央くんばっかり特別みたいで、ちょっとやだっただけ」

 さらっと言われたその言葉に、今度はわたしのほうがどきっとした。

 特別。
 玲央が?
 わたしに?

 そんなこと、考えたことなかったのに。
 いや、考えたらだめなのに。

「……るい」

 玲央の声が少しだけ低くなる。
 これ以上言うなって空気がにじんでいて、また胸がざわつく。

 でも、るいは引かなかった。

「だってほんとでしょ?」

「ちがう」

「じゃあ、なんでそんなにりんくんばっかり見るの?」

「っ……」

 思わず息をのむ。

 るいだけじゃない。
 クラスの空気まで静まって、みんなこっちを見ていた。

 やばい。
 なんかすごく目立ってる。
 しかも話の流れがまずい。

 そのときだった。

「……休み時間、終わるよ」

 静かに落ちた声に振り向くと、廊下の向こうに朔夜が立っていた。

 助かった――と思ったのも束の間。

 朔夜はじっとこっちを見たあと、わたしの腕をつかんでいる玲央と、反対側にいるるいを見比べて、冷たくひとこと。

「なにやってんの。朝から取り合いみたいでうるさい」

「と、取り合い!?」

 顔が一気に熱くなる。
 るいはぱっと腕を離したけど、玲央はなぜかすぐには手を放さなかった。

「玲央くん」

 るいがじっと見る。

 玲央は一瞬だけ黙って、それからやっとわたしの腕を離した。

「……行くぞ、りん」

「え、あ……うん」

 気づけば、するっと玲央の後ろに隠れるみたいに立ってしまっていた。
 その瞬間、るいの目が少しだけ揺れる。

「……そっか」

「るい?」

「ううん。なんでもない」

 にこっと笑ったその顔は、いつものるいなのに。
 なぜかさっきより少しだけ切なく見えた。

 わたしが戸惑っていると、玲央が小さく言う。

「行くぞ」

 その声にうながされて歩き出しながらも、わたしは何度も後ろを振り返ってしまった。

 るいは笑って手を振ってくれた。
 でも、その笑顔の奥に残った寂しさが、なぜかずっと胸に引っかかったままだった。