溺愛王子サマ達と秘密の同居

思わずうつむきかけた、そのとき。

「前見ろ」

 玲央の声と同時に、ぐいっと腕を引かれた。

「きゃっ」

 小さく悲鳴が漏れる。
 次の瞬間、さっきまでわたしがいた場所を、急いで走ってきた男子生徒が通りすぎていった。

「あっぶね」

「……っ」

 もし玲央が引いてくれなかったら、ぶつかってたかもしれない。

「ぼーっとすんな」

「ご、ごめん……」

「謝る前に気をつけろ」

 そう言う玲央の手は、まだわたしの腕をつかんだままだった。

 近い。
 視線も痛い。
 まわりの女子たちがざわっとしてるのまでわかって、心臓がうるさい。

「れ、玲央……もう大丈夫だから」

「大丈夫じゃない」

「え?」

「おまえ、人多いとすぐ飲まれるだろ」

 まっすぐ言われて、何も返せなくなる。

 すると玲央は、わたしの手首を軽く持ち直した。

「はぐれんなよ」

 そのまま歩き出されて、わたしは目を見開く。

「ちょ、ちょっと待って……!」

「待たない」

「み、みんな見てる……!」

「見せとけ」

「よくないでしょ!」

 でも玲央は全然気にしていない。
 その少し前を歩くるいが、くるっと振り返って笑った。

「玲央くん、過保護じゃない?」

「うるさい」

「りんくん、姫扱いされてるみたい」

「されてない!」

 即答したけど、全然説得力がなかった。

 教室のある棟に着いたころには、わたしの心拍数は朝から限界だった。

「ここ」

 悠真が足を止めた先に、わたしの教室があった。
 扉の前に立つだけで、お腹がきゅっとなる。

「転入初日だし、先生にはもう話通ってるよ」

「う、うん……」

「そんな顔しなくても大丈夫」

 悠真がやさしく笑ってくれる。

「何かあったらすぐ言って」

「ありがとう……」

「俺にも」

 玲央が横から当然みたいに言う。

 思わずそっちを見ると、玲央は昨日みたいな真剣な目をしていた。

「忘れんな」

「……うん」

 小さくうなずいた瞬間、教室の扉が開いた。

「夢咲鈴くんだね。入って」

 先生に呼ばれて、わたしはごくりとつばをのむ。
 ついに始まる。
 本当に、わたしの男装学園生活が。

 教室に入った瞬間、空気がざわめいた。

「え、誰……」

「めっちゃきれいな子じゃない?」

「男子だよな?」

 うわ、もう無理。
 視線が痛い。
 しかもその反応、全然安心できないやつなんだけど!?