溺愛王子サマ達と秘密の同居

「……それだけ?」

「それだけ?」

 玲央の眉がぴくっと動く。

「十分だろ」

「いや、もっとこう……黙ってる代わりに何かしろ、とか……」

「なんだよそれ」

 玲央があきれたように笑う。

「俺をなんだと思ってんの」

「だって、玲央だし……」

「どういう意味だ」

「なんかこう、もっと俺様なこと言いそうだから……」

 思わず本音がもれると、玲央は一瞬きょとんとして、それからふっと笑った。

「言うじゃん」

「……だってほんとのことだもん」

「ほんとにおもしれーな、おまえ」

 またそれ。
 でも今は、その言葉さえ近すぎて落ち着かない。

 壁についた玲央の手が、すぐ横にある。
 逃げられない距離。
 なのに、不思議と怖いだけじゃなかった。

 玲央は少しだけ顔を寄せて、小さく言う。

「いいか」

「……う、うん」

「もう少し、自分が女だって自覚しろ」

「っ……!」

 一気に顔が熱くなる。

「な、なにそれ……!」

「そのまんまの意味」

「意味わかんないし……!」

「わかれよ」

 玲央の声が、今度は少しだけやわらかくなる。

「おまえ、俺の前で簡単に隙見せすぎ」

「そんなつもりない……」

「でも見えてる」

 まっすぐ言われて、息が詰まる。

 見えてる。
 玲央には、もう全部。
 わたしが女だってことも、強がっててもほんとはいっぱいいっぱいなことも。

「……怖くないのかよ」

「え?」

「俺にバレて」

 玲央のそのひとことに、胸がきゅっとなる。

 怖い。
 ほんとはすごく怖かった。
 でも。

「……怖かったよ」

 正直にそう言うと、玲央の目が少しだけやわらいだ。

「でも」

「でも?」

「玲央が、すぐみんなに言わなくてよかったって……ちょっと思った」

 言ってから、恥ずかしさで消えたくなる。
 なに言ってるんだろう、わたし。

 でも玲央は笑わなかった。
 ただじっとわたしを見つめたあと、小さく息をつく。

「当たり前だろ」

「……え」

「泣きそうな顔してるやつ、追い詰めるほど趣味悪くねーよ」

 その言葉が、ずるいくらいやさしくて。
 胸の奥がじんっと熱くなる。

「それに」

 玲央の指が、わたしのあごにふれそうなくらい近づいて、でも触れずに止まる。

「知った以上、放っておけない」

「……玲央」

「だから」

 玲央はもう一度、わたしのすぐ横の壁を軽く叩いた。

「絶対、俺から離れんな」

 そのひとことが、まっすぐ心臓に落ちてくる。

 命令みたいなのに。
 強引なのに。
 なのにどうして、こんなに安心してしまうんだろう。