溺愛王子サマ達と秘密の同居

「それ、わかる」

 ぼそっと玲央が言った。

 空気が止まった気がした。

「……え?」

 わたしだけじゃなくて、るいたちまで一瞬目を丸くする。
 玲央は気にしたふうもなく、スープをひとくち飲んだ。

「危なっかしいだろ、こいつ」

「それを守りたくなるって言い換えるあたり、だいぶ重症だね」

 るいがにやにやしながら言うと、玲央がじろっと睨む。

「黙れ」

「こわーい」

 でも全然こわがってない。
 るい、強いなあ……。

 わたしは顔が熱くなるのを感じながら、必死にフォークを動かした。
 だめだ、これ以上この話を広げられたら心臓がもたない。

 そのときだった。

「りん」

 不意に名前を呼ばれて、びくっとする。

「は、はい!」

「口元」

「え?」

「ソースついてる」

「っ!?」

 反射で口元を押さえたけど、どこについてるのかわからない。
 あたふたしていると、玲央が小さくため息をついた。

「じっとして」

「え――」

 次の瞬間、玲央の指がふっとわたしの口元に触れた。

 ほんの一瞬。
 ほんの一瞬なのに、そこだけ熱が集まったみたいに、ぶわっと顔が熱くなる。

「はい、とれた」

 玲央は何でもないみたいに手を離す。
 でも、わたしは何でもなくなんていられない。

「な、な、な……っ」

「りんくん、顔真っ赤」

 るいが楽しそうに笑う。

「かわいい」

「か、かわいくない!」

 思わず叫ぶと、今度は悠真までくすっと笑った。

「ほんとに反応が素直だね」

「だって今のは反則でしょ……!」

「なにが反則なんだよ」

 玲央は本気でわかってなさそうな顔をしている。
 いや、絶対うそ。
 こんなの、わざとじゃなかったら余計たちが悪い。

 向かい側では、朔夜が静かにお箸を置いた。

「……玲央」

「なに」

「距離近すぎ」

 低く落ちたそのひとことに、また空気がぴんと張る。

 玲央はふっと笑った。

「気になる?」

「別に」

「なら口出すなよ」

「……うざ」

 朔夜が目を細める。
 るいはそんなふたりを見て面白がってるし、悠真は困ったように笑ってるし、なんだかもう情報量が多すぎる。

 わたしはただ、熱くなった頬を冷ましたくて水を飲んだ。
 でも、全然落ち着かない。

 だって、さっきからずっと思ってしまうから。

 なんで玲央は、こんなにわたしに構うんだろうって。

 そして――
 こんなことで、いちいちどきどきしてるわたしは、どうしたらいいんだろうって。