「水井くんって、本当に優しいよね」
「顔も中性的で綺麗だし、おまけに誰にでも親切だし、マジで王子様って感じ」
放課後の教室。クラスの女子たちの黄色い声に、僕――水井零は「あはは、そんなことないよ」といつもの愛想笑いを返していた。
学校での僕は、いわゆる『人気者』という枠に分類されているらしい
自分で言うのもなんだけど、人間関係を円滑にするために、誰に対しても優しく、当たり障りなく接してきた結果だ
でも、僕には絶対にクラスの奴らには言えない致命的な秘密があった
……やばい、早く帰りたい。今日、待ちに待った新作アニメの限定版BDの発売日なんだ。早く帰って、推しキャラの特製アクスタを開封して神棚に飾りたい……!
そう、僕は重度のゲーム・アニメオタクだった
学校での『爽やか王子様』の仮面が剥がれれば、そこにはただの限界オタクが残るだけ。
もしこれがバレたら、僕の平穏な高校生活は一瞬で崩壊する
女子たちの包囲網をなんとかすり抜け、僕はリュックを背負って足早に校舎を出た



