俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない

第一手術室は静まり返っていた。

​人工心肺装置のポンプ駆動音と、生体モニターの規則的な電子音だけが低く重く響いている。

​葵の胸は無影灯の下で開胸されていた。

葵は人工心肺による体外循環で生命を維持されている。

その心臓の病変部に対する冠動脈バイパス術(CABG)が、まさに行われている最中だった。

​葵の冠動脈は、高度な動脈硬化と線維化により脆く変性していた。

わずか0.5ミリの縫合のズレや手ブレすらも、術後出血やグラフト閉塞を招く。

そこは極限の術野だった。

​「メス」

​御堂律が低い声で命じた。

その声に呼応し、臨床工学技士(ME)と器械出し看護師がミリ単位のコンビネーションで応じる。

彼らは視線すら交わさない。熟練の連携だった。

​「サクション、術野の視界をクリアにしろ」

​「はい」

​律の手元には一切の迷いも狂いもなかった。