俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない

服薬が終わると、律は小さな綿棒を精製水で湿らせた。

そして葵の乾いた唇を、そっと撫でるように滑らせる。

​「……喉の渇きはどうだ」

​「……ええ、すごく楽になりました。ありがとうございます」

​「水分の過剰摂取は即座に心負荷へ繋がる。1口の無駄な水も許さんと言ったはずだ。……心機能が低下した状態で余計な水分を入れれば、利尿剤を使おうが腎臓が追いつかない。自らの体液で溺れることになるぞ。我慢しろ」

​律から淡々と語られるのは、容赦のない医療の事実と厳格な管理方針だ。

​けれど綿棒を動かす律の指先は、どこまでも繊細だった。

葵の唇に触れるか触れないかの力加減で、微かな潤いを与え続けている。

​律の見せる姿は、さっきまでの男と同一人物とは思えなかった。

ナースステーションで若い看護師を一切の情容赦なく叱責していた姿とは裏腹な、密やかな過保護さだった。

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