俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない

​律は指示を終えると、そのまま無表情のまま葵の病室のドアを開けた。

​律が室内に入ると同時に、廊下に漂っていた凄絶な威圧感は潮が引くように消え去る。

​「……午後の内服の時間だ」

​律は静かにベッド脇へ歩み寄った。

そしてトレイから小さなカプセルと錠剤を取り出す。

律は服薬用の専用ゼリーを極わずかに掬うと、スプーンの上に手際よく薬を乗せた。

​葵は重症心不全を抱えている。

そんな彼女の体にとって、服薬のために口にするわずかな水ですら1日の厳格な水分制限枠を圧迫してしまう。

律の行動は、水を使わずに滑らかに喉を通らせるための細心の配慮だった。

​「口を開けろ」

​「……はい」

​律の長くてしなやかな指先が、スプーンを葵の口元へ運ぶ。

葵はむせることもなく、薬が喉奥へと滑り落ちていった。

​