「……なぜ、私なんかにここまでしてくれるんですか?」
葵はずっと胸の奥に引っかかっていた疑問を、思わず口にしていた。
「私みたいな治る見込みのない患者なんて、他にもたくさんいるはずなのに……どうして律先生は、私にそこまでこだわるんですか?」
自分を卑下するような葵の問いに、律の目が微かに細められた。
律は葵の顎から手を離すと、今度は葵の右手を強引に引き寄せ、律の大きな手で包み込んだ。
「『私なんか』と2度と言うなと教えたはずだ」
律の声は低かった。
けれど、葵の手に触れる律の力は驚くほど優しく、暖かい。
「お前は覚えていないだろうがな」
「え……?」
「5年前だ。まだ俺が医者になり立ての初期研修医で、何もできず自分の無力さに打ちひしがれていた頃……この病院の庭で、雨の中泣きそうになっていた俺に、傘を差し出してきた間抜けなガキがいた」
葵はずっと胸の奥に引っかかっていた疑問を、思わず口にしていた。
「私みたいな治る見込みのない患者なんて、他にもたくさんいるはずなのに……どうして律先生は、私にそこまでこだわるんですか?」
自分を卑下するような葵の問いに、律の目が微かに細められた。
律は葵の顎から手を離すと、今度は葵の右手を強引に引き寄せ、律の大きな手で包み込んだ。
「『私なんか』と2度と言うなと教えたはずだ」
律の声は低かった。
けれど、葵の手に触れる律の力は驚くほど優しく、暖かい。
「お前は覚えていないだろうがな」
「え……?」
「5年前だ。まだ俺が医者になり立ての初期研修医で、何もできず自分の無力さに打ちひしがれていた頃……この病院の庭で、雨の中泣きそうになっていた俺に、傘を差し出してきた間抜けなガキがいた」



