俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない

​「おはようございます、一ノ瀬さん! 夕べはよく眠れましたか?」
​窓から差し込む爽やかな朝の光とともに、明るい声が病室に響いた。
朝のバイタルチェックにやってきたのは、担当看護師の山下だった。
​「あ……山下さん、おはようございます。はい、おかげさまでぐっすり眠れました」
​身体を起こすと、胸の圧迫感はすっかり消え、久しぶりに澄んだ空気を吸い込めている感覚があった。
​「良かった! 心電図の波形もすごく綺麗で安定してますよ」
​山下は体温計を手渡すと、手際よく血圧計のカフを葵の腕に巻きながら、優しく微笑んだ。
​「お部屋、静かでよく眠れましたか? 今朝の御堂先生の指示で、しばらく面会や不要な出入りは全部制限することになったんです。しっかり体力を戻しましょうね」
​「え……面会制限、ですか?」
​「ええ。一ノ瀬さんは今が一番大事な時期だからって。先生、今朝の回診前にもご自分でデータを細かく確認されていきましたよ」
​「……そうですか」
​手元の記録タブレットに数値を入力し終えると、山下は「では、また後で来ますね」と手際よく病室をあとにした。
カチャリとドアが閉まり、室内に再び静寂が戻る。
​(……面会制限まで……)
​面と向かっては「余計なことを考えるな」「ただ寝ていろ」と素気なく言い放つ律が、自分の知らないところでそこまで徹底して静養環境を固めていたとは思いもしなかった。
​「患者の安静のため」という正論の傘を盾にした、あまりにも彼らしい圧倒的な過保護。
胸の奥がじんわりと温かい熱を帯びていくのを感じながら、葵はそっと自分の胸に手を当てるのだった。