冷静な天才外科医の弱点は、私でした




 付き合い始めて、数週間。

 仕事中の圭は、相変わらず完璧だった。

 難しい手術では誰より冷静で、会議では迷いなく判断を下す。

 後輩には厳しく、患者には誠実。

 海外とのオンライン会議も、当然のように何ヶ国語でもこなす。

 誰が見ても隙のない男。

 けれど、私だけは知っている。

 恋人になった圭には、仕事中には絶対に見せない顔があることを。

 朝のことだ。

 デスクにつくと、一杯のコーヒーが置かれていた。

 通りかかった千春がひっそりと笑う。


「宗形先生?」

「声、大きい」


 私は慌てて周囲を見たけれど、幸い誰もこちらを見ていない。

 カップを持ち上げると、いつものミルクにいつもの温度。

 そして小さな付箋には几帳面そうな字で、


《今日は昼休みを取って》


 と書かれていた。

 付き合う前なら、コーヒーを置いてくれるだけだった。