冷静な天才外科医の弱点は、私でした




 しばらくして、宗形先生が出てきた。

 疲れ切った顔に乱れた髪。

 それでも、私を見つけてくれた。


「仲山さん」

「お疲れさまでした」


 宗形先生が私の前で立ち止まった。


「……ありがとう」

「先生が救ったんです」

「違う」


 宗形先生が静かに首を振る。


「君が時間を作った」


 私は何も言えなかった。

 最初の予算会議を思い出す。


 ーーこの予算案では、無理です。


 でも、あれは宗形先生の理想を否定するためではなかった。

 そのとき作った連携体制が、今日の手術を支えた。

 宗形先生が患者を救う。

 私はそのための仕組みを動かす。

 それが私たちの仕事だった。


「先生、今日はもう帰ってください」

「君は?」

「まだ報告があります」


 宗形先生は少し考えて、


「じゃあ、待つ」


 と力強く言い切った。


「え?」

「待ってるから」