冷静な天才外科医の弱点は、私でした




「ですが、宗形先生の患者さんだけがこの病院の患者さんではありません」


 会議室の温度が下がった気がした。

 誰かが息を呑む音がして、自分の鼓動がやけに大きく聞こえた。

 隣から、千春が小さく息を吸う音がした。

 ーー誰も、何も言わない。

 言ってしまったと思ったけれど、もう引き返せない。

 目の前の宗形先生の目が、ゆっくりと私を見る。

 私は真正面から受け止めた。

 ……ここで撤回したら、きっと後悔する。

 見つめ合い、数秒ーーいや、もっと長く感じた沈黙のあと。


「……では」


 宗形先生が口を開いた。


「どうすればいいと思いますか?」

「え?」


 予想していた言葉と違う。

 責められると、罵倒されると思っていた。

 けれど、彼の声は驚くほど冷静だった。


「君なら、どうする?」


 その一言に、どうしてか胸の奥がじんと痺れた。