冷静な天才外科医の弱点は、私でした




 数週間後のある日、午後三時四十二分。

 新しい心臓病治療センターで、宗形先生の手術が始まっていた。

 私は手術室の外で、通常業務を続けていた。

 ここに来るまで、宗形先生とは何度も意見をぶつけてきた。

 最初の予算会議で、私は彼の計画を見て言った。


 ーーこの予算案では、無理です。


 設備も、人員も必要だった。

 だから削るのではなく、他病院との連携を組み合わせた。

 一つの病院ですべてを抱え込まない。

 必要な医療資源を、必要なときに融通できる体制を作る。

 宗形先生は、その案を受け入れた。

 そして今日、その仕組みが初めて試される。


「ひかる」


 千春にポンと肩を叩かれる。


「いよいよだね」


 その目は力強く、成功することを疑っていない。


「うん。長かった……」


 思わず遠い目になってしまいそうだけど、ここからが正念場だ。