冷静な天才外科医の弱点は、私でした




 その日、宗形先生が大きな手術を終えた。

 難しい症例だったらしい。

 手術時間も長かったけれど、無事に成功した。


「さすが宗形先生ですね」

「今回も見事でした」

「本当にすごい先生だ」


 廊下では、そんな声が飛び交っていた。

 宗形先生はいつものように、


「ありがとうございます」


 と淡々と答えていた。

 私は少し離れたところから、その様子を見ていた。

 そしてふと、違和感を覚える。

 顔色が、ほんの少しだけ悪い。

 他の人なら気づかない程度だった。


「先生」

「はい?」

「ちゃんと寝てます?」


 宗形先生がチラッと私を見る。


「寝ています」


 即答だった。


「……本当に?」

「本当です」


 嘘だ。

 直感的にそう思った。

 別に、彼の生活を知っているわけではない。

 でも今日の顔色に、目の下の薄い影。