冷静な天才外科医の弱点は、私でした




 心臓病治療センター設立プロジェクトが正式に動き出してから、私の生活は少しだけ変わった。

 以前より会議が増えて、確認する資料もメールのやり取りも増えた。

 そして、何より変わったのはーー。


「仲山さん、ここの数字ですが、前年度の患者数を基準にしていますよね」

「そうです」

「今年度の増加率を考えると、こっちの数字のほうが現実的では?」

「……確かに」


 宗形先生と顔を合わせる回数が、驚くほど増えた。

 最初のうちは、正直に言えば気を遣った。

 何しろ、最初の会議で私は彼の予算案を真正面から否定している。

 しかも、だ。


『宗形先生の患者さんだけが、この病院の患者さんではありません』


 などと、今思い返してもかなり際どい発言までしてしまった。

 内心では嫌われていても不思議ではない。

 だから、最初の数回は彼と話すたびに身構えていた。

 ……のだけれど。