[神の声]
『罰の間へようこそ』
どこまでも白い光の世界で、冷厳な声が響き渡る。
[如月 凛]
「さぁ、罰を受けるのです」
……。
──【嫉束界魔ルート】へ突入。
[朝蔵 大空]
「私と、友達になって下さい」
[嫉束 界魔]
「え……」
嫉束くんは困った表情で、言葉に詰まらせているようだった。
やばい。
[朝蔵 大空]
「あわわ……」
嫉束くんが黙っちゃってる、どーしよ!?
[アリリオ]
『あちゃー、ここは一旦引こう!』
そ、そうだね!
[アリリオ]
『まずはこの場から去るんだ!』
うん!
[朝蔵 大空]
「忘れて下さい!」
私は嫉束くんより先に、保健室を後にした。
[嫉束 界魔]
「面白い子だな」
……。
学校から帰って来て、自宅のリビングにやって来た。
私の家も、原作通り? 忠実に再現されている。
[朝蔵 葵]
「〜♪」
[朝蔵 真昼]
「……」
真昼と、お母さんがいる…………お兄ちゃんは?
[朝蔵 大空]
「ねぇ、お兄ちゃんは?」
ソファに座っていた真昼の横に寄り掛かり、私は真昼にそう尋ねる。
[朝蔵 真昼]
「は? 千にぃは、仕事でいないでしょ。 馬鹿なの??」
辛辣っ!!
[アリリオ]
『あ〜。 朝蔵千夜は、今回のルートのシナリオには必要無いから、登場しないよ?』
えっ!!?
お兄ちゃん存在消されちゃった?!
[アリリオ]
『ぁーん……厳密には、存在してないわけじゃなくて。 自分から会いに行くか、フラグを立てないと登場しないってこと。 この世界のどこかには生きてるから、安心して〜』
良かった……。
[アリリオ]
『ごめん。 大事な話したいから、ちょっと君の部屋まで来てくれる?』
?……分かった。
私は、リビングから自室へと移動してくる。
[朝蔵 大空]
「来たよ?」
[アリリオ]
『ありがとう! そしたら、部屋の鏡を見てみて!』
[朝蔵 大空]
「鏡……?」
私は部屋に置いてあるドレッサーに、視線を移す。
[朝蔵 大空]
「うわっ!?」
私は、鏡の前へと駆け寄った。
[アリリオ]
『見えた?』
鏡の中に、アリリオくんがいる……。
[アリリオ]
『うん! やっぱりお互いの顔が見えると、話しやすいね!』
[朝蔵 大空]
「そうかも」
[アリリオ]
『えっと。 ここまでやって来て、何か質問とか、気になってる事とかある?』
[朝蔵 大空]
「ある」
[アリリオ]
『なぁに?』
私が今、気になってることは……。
[朝蔵 大空]
「私がここにいる間、私が元居た世界はどうなってるの?」
[アリリオ]
『現実世界のことだね。 君がそっち……つまりゲームの中にいる間は、現実の時間は少しずつしか進まない仕様になっているんだ!』
[朝蔵 大空]
「へぇ……」
[アリリオ]
『具体的に言えば、そっちの世界の一日は、現実だと1分にも満たないことになるよ』
[朝蔵 大空]
「そ、そんなに?!」
つまりここに居れば、いくらでもゲームやり放題……ゴクリ。
それは、凄く魅力的だけど。
[アリリオ]
『分かったかな? 他には何か質問ある?』
[朝蔵 大空]
「それなら私一度、現実世界に戻りたいんだけど?」
[アリリオ]
『ごめん! それは出来ないんだ』
アリリオくんが、申し訳無さそうな顔でそう告げる。
[朝蔵 大空]
「え?」
[アリリオ]
『一度ゲームの世界に入ると……そのゲームを《《全クリ》》するまで、出て来られない仕様になっているからね』
[朝蔵 大空]
「はっ!?」
そんなの聞いてない!
[アリリオ]
『だって、言ったら協力してくれなくなっちゃうでしょ?』
[朝蔵 大空]
「それでも言ってほしかった!!」
ガチャ。
[朝蔵 大空]
「!?」
突然部屋のドアを開けられ、びっくりして振り返る。
[朝蔵 真昼]
「うるさい、勉強中なんだけど」
[朝蔵 大空]
「ご、ごめん……静かにするね」
私がそう言うと、真昼は自分の部屋に帰って行った。
[朝蔵 大空]
「あ……」
鏡のほうを向き直すと、アリリオくんの姿は既に無かった。
しーんと静まり返る、私の部屋。
[朝蔵 大空]
「まだ聞きたいことあったのに」
私、本当に、本当に……『全クリ』するまで、ここから出られないの?
なんてこった。
……。
翌朝、学校にて。
[笹妬 吉鬼]
「へぇ、そんなことがあったんだ」
[嫉束 界魔]
「どうしたら良いと思う?」
[笹妬 吉鬼]
「どうしたらって……そんなの自分で決めろよ」
ふたりの美形な少年が、学校の校舎裏で腰を下ろして話をしていた。
[嫉束 界魔]
「……『友達になって下さい』って言葉、そのままの意味で受け取っちゃって、良いのかな?」
[笹妬 吉鬼]
「さぁ? その子、お前に気があんじゃね」
笹妬がそう言って、冗談っぽく笑う。
[嫉束 界魔]
「やっぱ、そうだよね」
嫉束は、ため息を吐きながら俯く。
[笹妬 吉鬼]
「お前モテすぎ」
[嫉束 界魔]
「でも不思議なんだよね」
[笹妬 吉鬼]
「何が?」
[嫉束 界魔]
「その子、話す時 " 遠慮 " が無いんだ。 まるで前から知り合いだったような……だから、凄く不思議」
そう言って嫉束は、神妙な顔で遠くを眺める。
[笹妬 吉鬼]
「ほう?」
[嫉束 界魔]
「あんな子初めて。 だから…………」
……。
[朝蔵 大空]
「……」
おーい、生きてる?
ねぇ!!
[朝蔵 大空]
「はぁ……」
昨日から頭の中で呼び掛けてみても、アリリオくんは返事をしてくれなくなってしまった。
なんかムカつく……向こうはこっちのこと見えてるくせに、こっちから向こうに『連絡』する手段が無いなんて。
ひとりこの世界に置き去りにされても、不安なんですけどー。
[永瀬 里沙]
「おっ、真剣な顔してどーした〜?」
[朝蔵 大空]
「な、なんでも無いよ」
[永瀬 里沙]
「もしかして、恋煩らい?」
里沙ちゃんがニヤニヤとした表情で、そう聞いてきた。
[朝蔵 大空]
「恋煩い?!」
[永瀬 里沙]
「ねぇ、好きな人出来たら絶対言ってよ? 約束ね!!」
[朝蔵 大空]
「う、うん」
好きな人とか別にいないけど……あ、でも『攻略対象』ならいるなぁ。
攻略って言っても、私に出来るのかな……?
── だって私、今まで…… " 誰とも付き合ったこと無いのに "。
[朝蔵 大空]
「トイレ行ってくる」
[永瀬 里沙]
「うん」
私はひとり廊下に出て、トイレへと向かう。
[朝蔵 大空]
「ふぅ……」
用が済み、手洗い場で手を洗っている時だった。
[SFC女子A]
「あんたさぁ」
[朝蔵 大空]
「!?」
私、話し掛けられた?
[モブ女子A]
「はい……」
[SFC女子A]
「会員の人間じゃないよね? なに嫉束くんと親しげに話してるの?」
私じゃなかった。
[SFC女子B]
「嫉束くんとお話したいなら、ファンクラブに入って頂戴」
[SFC女子A]
「月額、《《3万円》》でね」
高っ!
月3万とか、高校生がすぐ出せる値段じゃないよ!!
[モブA]
「すみません、払えません……」
[SFC女子A]
「だったら、うちらの嫉束くんに気安く話し掛けないでくれる?」
[モブA]
「分かりました、もう嫉束くんとは話しません」
淡々と答えてSFCに従う、そんな女子生徒に同情してしまうけど。
逆らったら面倒臭いし、怖いからそうするしか無いんだろうな。
[朝蔵 大空]
「……」
私は見て見ぬふりをして、女子トイレを後にした。
嫌なもの見ちゃったな……。
── そして、昼休み。
[永瀬 里沙]
「昼休みだー! 大空、学食行くわよ!」
[朝蔵 大空]
「うん」
私と里沙ちゃんが、学食に向かおうとしたその時。
[朝蔵 大空]
「あっ、狂沢くーん」
[狂沢 蛯斗]
「……」
[永瀬 里沙]
「……?」
前方を歩いている、狂沢くんの姿が見えたので、私は声を掛けてみた。
[朝蔵 大空]
「あれ? 狂沢くん、司くんは一緒じゃないの?」
[狂沢 蛯斗]
「はて? " 司くん " とは、誰のことでしょう?」
[朝蔵 大空]
「えっ」
まさか!?
このルートだと、【巣桜司】って存在しないの??
[永瀬 里沙]
「あれれ? へー! 大空と狂沢くんって、仲良かったんだ〜?」
[狂沢 蛯斗]
「いえ、お話するのは《《初めて》》です」
[朝蔵 大空]
「おっと……」
あ〜やばいやばい、時系列が訳分かんないことになってる!
ちょっと一旦、整理する時間が欲しい〜。
[アリリオ]
『一時停止機能だね! 心の中で、【ポーズ】! と唱えるんだ!!』
ポーズ……!!
[狂沢 蛯斗]
「……」
[永瀬 里沙]
「……」
時間が止まった?
[朝蔵 大空]
「って、アリリオくん! なんで今朝は、返事してくれなかったのー?!」
[アリリオ]
『え? んー、なんかさ! 僕がいちいち間に入ると、世界観壊れちゃうって言うかさ? だってこれ一応、ファンタジー無しの【現代学園もの】だし〜』
[朝蔵 大空]
「アリリオくん、私聞きたいことがあって……」
[アリリオ]
「あ、《《時間切れ》》」
[朝蔵 大空]
「え?」
── 再生。
[永瀬 里沙]
「え、そうなの? 大空、どう言うこと?」
[朝蔵 大空]
「……え、あ、何が?」
[永瀬 里沙]
「ん? だから、大空と狂沢くんってどう言う関係?」
どう言う関係って……。
これってつまり、まだ狂沢くんと仲良くなる前に、私が馴れ馴れしく話し掛けちゃったってことだよね??
里沙ちゃんは、そこに疑問を感じているんだ!
[朝蔵 大空]
「あ……えと」
もし私が、プレイヤーとしてゲームをプレイしてるって、里沙ちゃん達にバレたらどうなるんだろ?
それをさっき、アリリオくんに聞きたかったのに。
私は、狂沢くんが首に掛けているカメラに目を向ける。
[朝蔵 大空]
「じ、実は私! ちょっとだけ、カメラに興味があって……」
[永瀬 里沙]
「えー、そうな……」
[狂沢 蛯斗]
「そうだったんですね!!!」
ホワワーン。
── 対象、【狂沢蛯斗】の好感度が40%に上昇。
ぎゃっ!! 意図せず、狂沢くんの好感度が上がってしまった!?
[狂沢 蛯斗]
「でしたら今日の放課後、中庭でお待ちしております!!」
今更、『冗談でした』とは言えない空気に。
狂沢くんはスキップをして、食堂まで向かって行った。
……。
[永瀬 里沙]
「ねぇ、放課後約束してるんでしょ?」
[朝蔵 大空]
「うん……」
帰りのホームルームが終わっても、私は自分の席から動けずにいた。
ここで本当に、狂沢くんの元へ行くべき?
でも今って、【嫉束界魔ルート】なんだよね?
狂沢くんと嫉束くんって、関係無くない?
[朝蔵 大空]
「よし……里沙ちゃん、じゃあね!」
[永瀬 里沙]
「うん、じゃあね!」
まぁ、狂沢くん待たせてるし、とりあえず行くか。
私は教室を出て、中庭へ向かう。
[狂沢 蛯斗]
「お待ちしておりました!」
ホワワーン。
── 狂沢蛯斗の好感度が50%に上昇。
いや、やっぱりおかしいよ。
今は嫉束くんルートなんだから、そしてカメラなんかには一ミリも興味が無い。
やっぱり気が変わったとか言って、断ろう。
[朝蔵 大空]
「あの、狂沢くん……さっきはああ言ったけど、やっぱり……」
[狂沢 蛯斗]
「大空さん、ボクずっと寂しかったんです。 だから、貴女が写真部に入りたいと言ってくれた時、心から嬉しかった」
私、『写真部に入りたい』なんて言ったっけ??
狂沢くんが私に詰め寄り、私の両手を掴んで来る。
[朝蔵 大空]
「ちょっ……」
ホワワーン。
── 狂沢蛯斗の好感度が70%に上昇。
やばいやばい、なんもしてないのに狂沢くんの好感度が、どんどん上がっていくんですけど、怖〜。
[狂沢 蛯斗]
「これからふたりで、一生懸命、部活動に励んでいきましょうね!」
助けて!
[狂沢 蛯斗]
「いてっ……」
その時、横から《《何か》》飛んで来て、狂沢くんの頭に直撃した。
地面にその《《何か》》が、コロンと転がる。
[朝蔵 大空]
「テニスボール?」
「再び始まる日」おわり……。
『罰の間へようこそ』
どこまでも白い光の世界で、冷厳な声が響き渡る。
[如月 凛]
「さぁ、罰を受けるのです」
……。
──【嫉束界魔ルート】へ突入。
[朝蔵 大空]
「私と、友達になって下さい」
[嫉束 界魔]
「え……」
嫉束くんは困った表情で、言葉に詰まらせているようだった。
やばい。
[朝蔵 大空]
「あわわ……」
嫉束くんが黙っちゃってる、どーしよ!?
[アリリオ]
『あちゃー、ここは一旦引こう!』
そ、そうだね!
[アリリオ]
『まずはこの場から去るんだ!』
うん!
[朝蔵 大空]
「忘れて下さい!」
私は嫉束くんより先に、保健室を後にした。
[嫉束 界魔]
「面白い子だな」
……。
学校から帰って来て、自宅のリビングにやって来た。
私の家も、原作通り? 忠実に再現されている。
[朝蔵 葵]
「〜♪」
[朝蔵 真昼]
「……」
真昼と、お母さんがいる…………お兄ちゃんは?
[朝蔵 大空]
「ねぇ、お兄ちゃんは?」
ソファに座っていた真昼の横に寄り掛かり、私は真昼にそう尋ねる。
[朝蔵 真昼]
「は? 千にぃは、仕事でいないでしょ。 馬鹿なの??」
辛辣っ!!
[アリリオ]
『あ〜。 朝蔵千夜は、今回のルートのシナリオには必要無いから、登場しないよ?』
えっ!!?
お兄ちゃん存在消されちゃった?!
[アリリオ]
『ぁーん……厳密には、存在してないわけじゃなくて。 自分から会いに行くか、フラグを立てないと登場しないってこと。 この世界のどこかには生きてるから、安心して〜』
良かった……。
[アリリオ]
『ごめん。 大事な話したいから、ちょっと君の部屋まで来てくれる?』
?……分かった。
私は、リビングから自室へと移動してくる。
[朝蔵 大空]
「来たよ?」
[アリリオ]
『ありがとう! そしたら、部屋の鏡を見てみて!』
[朝蔵 大空]
「鏡……?」
私は部屋に置いてあるドレッサーに、視線を移す。
[朝蔵 大空]
「うわっ!?」
私は、鏡の前へと駆け寄った。
[アリリオ]
『見えた?』
鏡の中に、アリリオくんがいる……。
[アリリオ]
『うん! やっぱりお互いの顔が見えると、話しやすいね!』
[朝蔵 大空]
「そうかも」
[アリリオ]
『えっと。 ここまでやって来て、何か質問とか、気になってる事とかある?』
[朝蔵 大空]
「ある」
[アリリオ]
『なぁに?』
私が今、気になってることは……。
[朝蔵 大空]
「私がここにいる間、私が元居た世界はどうなってるの?」
[アリリオ]
『現実世界のことだね。 君がそっち……つまりゲームの中にいる間は、現実の時間は少しずつしか進まない仕様になっているんだ!』
[朝蔵 大空]
「へぇ……」
[アリリオ]
『具体的に言えば、そっちの世界の一日は、現実だと1分にも満たないことになるよ』
[朝蔵 大空]
「そ、そんなに?!」
つまりここに居れば、いくらでもゲームやり放題……ゴクリ。
それは、凄く魅力的だけど。
[アリリオ]
『分かったかな? 他には何か質問ある?』
[朝蔵 大空]
「それなら私一度、現実世界に戻りたいんだけど?」
[アリリオ]
『ごめん! それは出来ないんだ』
アリリオくんが、申し訳無さそうな顔でそう告げる。
[朝蔵 大空]
「え?」
[アリリオ]
『一度ゲームの世界に入ると……そのゲームを《《全クリ》》するまで、出て来られない仕様になっているからね』
[朝蔵 大空]
「はっ!?」
そんなの聞いてない!
[アリリオ]
『だって、言ったら協力してくれなくなっちゃうでしょ?』
[朝蔵 大空]
「それでも言ってほしかった!!」
ガチャ。
[朝蔵 大空]
「!?」
突然部屋のドアを開けられ、びっくりして振り返る。
[朝蔵 真昼]
「うるさい、勉強中なんだけど」
[朝蔵 大空]
「ご、ごめん……静かにするね」
私がそう言うと、真昼は自分の部屋に帰って行った。
[朝蔵 大空]
「あ……」
鏡のほうを向き直すと、アリリオくんの姿は既に無かった。
しーんと静まり返る、私の部屋。
[朝蔵 大空]
「まだ聞きたいことあったのに」
私、本当に、本当に……『全クリ』するまで、ここから出られないの?
なんてこった。
……。
翌朝、学校にて。
[笹妬 吉鬼]
「へぇ、そんなことがあったんだ」
[嫉束 界魔]
「どうしたら良いと思う?」
[笹妬 吉鬼]
「どうしたらって……そんなの自分で決めろよ」
ふたりの美形な少年が、学校の校舎裏で腰を下ろして話をしていた。
[嫉束 界魔]
「……『友達になって下さい』って言葉、そのままの意味で受け取っちゃって、良いのかな?」
[笹妬 吉鬼]
「さぁ? その子、お前に気があんじゃね」
笹妬がそう言って、冗談っぽく笑う。
[嫉束 界魔]
「やっぱ、そうだよね」
嫉束は、ため息を吐きながら俯く。
[笹妬 吉鬼]
「お前モテすぎ」
[嫉束 界魔]
「でも不思議なんだよね」
[笹妬 吉鬼]
「何が?」
[嫉束 界魔]
「その子、話す時 " 遠慮 " が無いんだ。 まるで前から知り合いだったような……だから、凄く不思議」
そう言って嫉束は、神妙な顔で遠くを眺める。
[笹妬 吉鬼]
「ほう?」
[嫉束 界魔]
「あんな子初めて。 だから…………」
……。
[朝蔵 大空]
「……」
おーい、生きてる?
ねぇ!!
[朝蔵 大空]
「はぁ……」
昨日から頭の中で呼び掛けてみても、アリリオくんは返事をしてくれなくなってしまった。
なんかムカつく……向こうはこっちのこと見えてるくせに、こっちから向こうに『連絡』する手段が無いなんて。
ひとりこの世界に置き去りにされても、不安なんですけどー。
[永瀬 里沙]
「おっ、真剣な顔してどーした〜?」
[朝蔵 大空]
「な、なんでも無いよ」
[永瀬 里沙]
「もしかして、恋煩らい?」
里沙ちゃんがニヤニヤとした表情で、そう聞いてきた。
[朝蔵 大空]
「恋煩い?!」
[永瀬 里沙]
「ねぇ、好きな人出来たら絶対言ってよ? 約束ね!!」
[朝蔵 大空]
「う、うん」
好きな人とか別にいないけど……あ、でも『攻略対象』ならいるなぁ。
攻略って言っても、私に出来るのかな……?
── だって私、今まで…… " 誰とも付き合ったこと無いのに "。
[朝蔵 大空]
「トイレ行ってくる」
[永瀬 里沙]
「うん」
私はひとり廊下に出て、トイレへと向かう。
[朝蔵 大空]
「ふぅ……」
用が済み、手洗い場で手を洗っている時だった。
[SFC女子A]
「あんたさぁ」
[朝蔵 大空]
「!?」
私、話し掛けられた?
[モブ女子A]
「はい……」
[SFC女子A]
「会員の人間じゃないよね? なに嫉束くんと親しげに話してるの?」
私じゃなかった。
[SFC女子B]
「嫉束くんとお話したいなら、ファンクラブに入って頂戴」
[SFC女子A]
「月額、《《3万円》》でね」
高っ!
月3万とか、高校生がすぐ出せる値段じゃないよ!!
[モブA]
「すみません、払えません……」
[SFC女子A]
「だったら、うちらの嫉束くんに気安く話し掛けないでくれる?」
[モブA]
「分かりました、もう嫉束くんとは話しません」
淡々と答えてSFCに従う、そんな女子生徒に同情してしまうけど。
逆らったら面倒臭いし、怖いからそうするしか無いんだろうな。
[朝蔵 大空]
「……」
私は見て見ぬふりをして、女子トイレを後にした。
嫌なもの見ちゃったな……。
── そして、昼休み。
[永瀬 里沙]
「昼休みだー! 大空、学食行くわよ!」
[朝蔵 大空]
「うん」
私と里沙ちゃんが、学食に向かおうとしたその時。
[朝蔵 大空]
「あっ、狂沢くーん」
[狂沢 蛯斗]
「……」
[永瀬 里沙]
「……?」
前方を歩いている、狂沢くんの姿が見えたので、私は声を掛けてみた。
[朝蔵 大空]
「あれ? 狂沢くん、司くんは一緒じゃないの?」
[狂沢 蛯斗]
「はて? " 司くん " とは、誰のことでしょう?」
[朝蔵 大空]
「えっ」
まさか!?
このルートだと、【巣桜司】って存在しないの??
[永瀬 里沙]
「あれれ? へー! 大空と狂沢くんって、仲良かったんだ〜?」
[狂沢 蛯斗]
「いえ、お話するのは《《初めて》》です」
[朝蔵 大空]
「おっと……」
あ〜やばいやばい、時系列が訳分かんないことになってる!
ちょっと一旦、整理する時間が欲しい〜。
[アリリオ]
『一時停止機能だね! 心の中で、【ポーズ】! と唱えるんだ!!』
ポーズ……!!
[狂沢 蛯斗]
「……」
[永瀬 里沙]
「……」
時間が止まった?
[朝蔵 大空]
「って、アリリオくん! なんで今朝は、返事してくれなかったのー?!」
[アリリオ]
『え? んー、なんかさ! 僕がいちいち間に入ると、世界観壊れちゃうって言うかさ? だってこれ一応、ファンタジー無しの【現代学園もの】だし〜』
[朝蔵 大空]
「アリリオくん、私聞きたいことがあって……」
[アリリオ]
「あ、《《時間切れ》》」
[朝蔵 大空]
「え?」
── 再生。
[永瀬 里沙]
「え、そうなの? 大空、どう言うこと?」
[朝蔵 大空]
「……え、あ、何が?」
[永瀬 里沙]
「ん? だから、大空と狂沢くんってどう言う関係?」
どう言う関係って……。
これってつまり、まだ狂沢くんと仲良くなる前に、私が馴れ馴れしく話し掛けちゃったってことだよね??
里沙ちゃんは、そこに疑問を感じているんだ!
[朝蔵 大空]
「あ……えと」
もし私が、プレイヤーとしてゲームをプレイしてるって、里沙ちゃん達にバレたらどうなるんだろ?
それをさっき、アリリオくんに聞きたかったのに。
私は、狂沢くんが首に掛けているカメラに目を向ける。
[朝蔵 大空]
「じ、実は私! ちょっとだけ、カメラに興味があって……」
[永瀬 里沙]
「えー、そうな……」
[狂沢 蛯斗]
「そうだったんですね!!!」
ホワワーン。
── 対象、【狂沢蛯斗】の好感度が40%に上昇。
ぎゃっ!! 意図せず、狂沢くんの好感度が上がってしまった!?
[狂沢 蛯斗]
「でしたら今日の放課後、中庭でお待ちしております!!」
今更、『冗談でした』とは言えない空気に。
狂沢くんはスキップをして、食堂まで向かって行った。
……。
[永瀬 里沙]
「ねぇ、放課後約束してるんでしょ?」
[朝蔵 大空]
「うん……」
帰りのホームルームが終わっても、私は自分の席から動けずにいた。
ここで本当に、狂沢くんの元へ行くべき?
でも今って、【嫉束界魔ルート】なんだよね?
狂沢くんと嫉束くんって、関係無くない?
[朝蔵 大空]
「よし……里沙ちゃん、じゃあね!」
[永瀬 里沙]
「うん、じゃあね!」
まぁ、狂沢くん待たせてるし、とりあえず行くか。
私は教室を出て、中庭へ向かう。
[狂沢 蛯斗]
「お待ちしておりました!」
ホワワーン。
── 狂沢蛯斗の好感度が50%に上昇。
いや、やっぱりおかしいよ。
今は嫉束くんルートなんだから、そしてカメラなんかには一ミリも興味が無い。
やっぱり気が変わったとか言って、断ろう。
[朝蔵 大空]
「あの、狂沢くん……さっきはああ言ったけど、やっぱり……」
[狂沢 蛯斗]
「大空さん、ボクずっと寂しかったんです。 だから、貴女が写真部に入りたいと言ってくれた時、心から嬉しかった」
私、『写真部に入りたい』なんて言ったっけ??
狂沢くんが私に詰め寄り、私の両手を掴んで来る。
[朝蔵 大空]
「ちょっ……」
ホワワーン。
── 狂沢蛯斗の好感度が70%に上昇。
やばいやばい、なんもしてないのに狂沢くんの好感度が、どんどん上がっていくんですけど、怖〜。
[狂沢 蛯斗]
「これからふたりで、一生懸命、部活動に励んでいきましょうね!」
助けて!
[狂沢 蛯斗]
「いてっ……」
その時、横から《《何か》》飛んで来て、狂沢くんの頭に直撃した。
地面にその《《何か》》が、コロンと転がる。
[朝蔵 大空]
「テニスボール?」
「再び始まる日」おわり……。


