最強ヴァンパイアに溺愛されています!

「美月」

急に名前だけ呼ばれて、肩がびくっと揺れる。

「はい……」

「今、逃げるなよ」

言われた意味を考える前に、ルカが一歩近づく。
もともと近かった距離が、もうほとんどなくなる。

壁際でもないのに、逃げ道がない。
でも怖くはなかった。
ただ、胸がいっぱいで苦しい。

「今日ずっと思ってた」

ルカの声が、すぐ近くで落ちる。

「昼のあと、教室戻ってからも、お前のことばっかり見てた」

「うん……」

「他のやつと話してるだけで苛立った」

正直すぎる言葉に、また胸が熱くなる。

「でも、そんな顔するなら」

ルカの指先がそっと美月のあごに触れ、少しだけ上を向かせる。

「俺だけじゃないんだって分かる」

「……っ」

近い。
近すぎる。

ルカのまつげも、少し伏せられた瞳も、夕陽に透ける横顔も、全部がきれいで、息をするのも難しい。

「キスしたい」

そのひと言に、頭が真っ白になった。

「え……」

「すごくしたい」

ルカは視線を逸らさない。
冗談でもからかいでもない、本気の顔だった。

「でも」

低い声が少しだけ苦しそうになる。

「今ここでしたら、たぶん足りなくなる」

その言葉の意味に気づいた瞬間、顔が一気に熱くなる。
ルカはそんな美月を見て、困ったように笑った。

「だから止まってる」

触れたいのに止まってくれている。
大事にしたいから我慢してくれている。
それが分かるだけで、胸の奥がぎゅっと甘く痛んだ。