最強ヴァンパイアに溺愛されています!

一瞬で空気が変わる。
さっきまでにぎやかだった教室が、ぴたりと静まった気がした。

ルカはゆっくり歩いてくる。
焦っている様子なんてまるでない。
なのに一歩近づくたび、教室の温度が下がっていくみたいだった。

「ルカくん……」

名前を呼ぶと、ルカの視線がまっすぐ美月に向く。
その目だけはやわらかい。
けれどすぐに、他の四人へ向ける空気が冷たくなった。

「何してる」

「見ての通り、帰りの相談です」

玲が先に答える。

「白雪さんがひとりに偏らないようにね」

「必要ない」

ルカは即答した。

「こいつは俺と帰る」

「またそれですか」

奏多がむっとする。

「九条先輩、独占しすぎです」

「そうだな」

夜斗もめずらしく真顔だった。

「さすがに毎回それは通らないだろ」

「通る」

ルカは一歩も引かない。

「本人が嫌がってない」

その言葉に、全員の視線が美月に集まった。

「えっ」

突然向けられた視線に、心臓が跳ねる。
答えなきゃいけない。
でも、こんなの答えられるわけがない。

「美月先輩」

奏多が少しかがんで目線を合わせる。

「嫌なら嫌って言っていいんですよ」

「転校生ちゃん、遠慮しなくていいから」

夜斗も言う。

「白雪さんの気持ちが一番大事だよ」

玲の声はやさしい。
冬真は何も言わない。
でもじっと美月を見ていた。

みんな優しい。
それなのに、答えようとすると真っ先に浮かぶのはルカの顔だった。

昼休みに抱き寄せられたぬくもり。
明るい踊り場で交わした秘密。
教室に戻っても余裕そうに守ってくれたこと。

その全部を思い出した瞬間、胸がきゅっとなる。

「私は……」

小さく息を吸う。

「ルカくんと、帰りたい」