最強ヴァンパイアに溺愛されています!

放課後のチャイムが鳴った瞬間だった。

一日ぶんの緊張がほどけるはずなのに、美月の心臓はむしろ朝からずっと落ち着かないままだった。
昼休みの秘密も、そのあとのルカの視線も、全部が甘すぎて、まだちゃんと整理できていない。

教科書を鞄にしまおうとした、その時。

「美月先輩、今日こそ一緒に帰りましょう」

最初に来たのは奏多だった。
机の前に立って、にこっと笑う。
でもその笑顔の奥に、今日は少しだけ強引さがある。

「え、えっと……」

「昼も九条先輩に取られたし、放課後くらい俺にください」

まっすぐ言われて、美月はどきっとする。
どう返したらいいか迷っていると、後ろから夜斗の声がした。

「それ、俺も賛成」

振り向けば、夜斗が気だるそうに片手を上げている。
けれど目はしっかり笑っていなかった。

「転校生ちゃん、九条にばっか付き合うの不公平だろ」

「不公平って……」

「だってさ」

夜斗は美月の机に軽く手をついて、少しだけかがむ。

「こっちだって、気になってんのに」

低めの声でそんなことを言うから、美月の頬がまた熱くなる。

さらに、教室の入口近くから玲がゆっくり歩いてきた。

「それなら、今日はみんなで帰るのはどうかな」

穏やかな声。
でもその笑顔は、いつもより少しだけ意味深だった。

「白雪さんが困らない方法を選ぶべきだろうし」

「俺は困らせてませんけど」

奏多がすぐ言い返す。

「困らせてるよ」

夜斗が笑いながら口を挟む。

「今もう顔真っ赤じゃん」

「そ、それは……」

言い返せずにいると、椅子の引かれる音がした。
神楽冬真が静かに立ち上がる。

「……白雪」

「え?」

「帰るなら、早いほうがいい」

短いひと言。
でもそれは冬真なりの気遣いであり、
同時に自分も一緒にいたいと言っているように聞こえた。

四人に囲まれるみたいな空気。
甘いのに逃げ場がなくて、美月は完全に固まってしまう。

その時だった。

「ずいぶん楽しそうだな」

ひやりと空気を切るような声が、教室の後ろから落ちた。

九条ルカだった。