最強ヴァンパイアに溺愛されています!

「白雪さん」

玲が静かに立ち上がる。
いつもの穏やかな笑顔なのに、今日はどこか鋭さが混じっている。

「少し顔色が違うね。大丈夫かい」

「え……」

そう言われて、思わず首元に手をやりそうになる。
でもその前に、ルカの指がそっと美月の手首を取った。

「触るな」

低い声だった。
強くはない。
でもはっきりとした牽制だった。

玲がわずかに目を細める。

「心配しただけだよ」

「分かってる」

「それなら、なおさら様子くらい見せてくれてもいいんじゃないかな」

玲のやわらかい声と、ルカの静かな圧。
その間に立たされているだけで、美月はまた落ち着かなくなる。

すると、冬真が席から立った。

「……白雪」

「えっ」

名前で呼ばれて、美月は目を見開く。
冬真は少しだけ視線をそらしながら、短く言った。

「座れ。チャイム鳴る」

ぶっきらぼうだけれど、気遣ってくれているのが分かる。
その言葉にほっとしかけた、その時。

ルカが美月の肩にそっと手を置いた。

「俺が座らせる」

「え」

あっさり言って、美月を席まで連れていく。
まるでエスコートみたいに自然で、逃げ場がない。

椅子を引いてくれて、座るのを見届けてから、ようやくルカは手を離した。
その一連の動作があまりにも丁寧で、教室中の視線が痛いくらい集まる。

「九条先輩、それ過保護すぎません?」

奏多がついに抗議する。

「そうか?」

「そうです」

「でも、お前に任せるよりマシだ」

「なんでそこで俺なんですか」

「距離が近い」

「九条先輩もですけど?」

ぴしゃりと返されて、夜斗が吹き出す。
玲も小さく笑ったけれど、その目はまだ美月の様子を見ている。
冬真だけが黙ったまま、何かを考えるみたいに視線を落としていた。