次の大きな大会が目前に迫った放課後。
それぞれの学校で汗を流す部員たちの中に、ひときわ強い決意を秘めた二人がいた。
「声出していこう!」
桜はベンチの端から、誰よりも大きく、力強い声を響かせる。その声が体育館の空気を震わせた瞬間、コートの真ん中にいた佐保ブルッと肩を揺らし、ハッと顔を上げた。
――あの子の声だ。
反射的に視線を向けた先で、桜の瞳と佐保の視線が、まっすぐに、鮮やかにぶつかり合った。
ただの「憧れ」でも「推し活」でもない。名前のつかなかった熱い想いが、お互いの胸の中で確かな形に変わっていく。
目を逸らさない桜と、驚いたようにわずかに目を見開いたのち、ふっと柔らかく微笑み返す佐保。
「――どうして、あの子ばかり目で追ってしまうのだろう?」
その答えを、もう二人は知っている。
心の中でそっと名前をつけたその恋は、コートの端から一番大きな声に乗せて、きらめく秋の空へとまっすぐ届いていくのだった。



