それからというもの、練習試合や大会で佐保の姿を見かけるたび、桜の胸のなかは甘酸っぱい熱で満たされた。大きな声でチームメイトの名前を呼ぶとき、ほんの少しだけ佐保の方を見てしまう。
――先輩は、私のことなんて気づいてないよね。
そう思い込んでいた桜だったが、実は、佐保のほうも同じだった。
試合の喧騒が去った控室や、ネットの向こう側。
あの日の新人戦で、ベンチからひたむきに、そして誰よりも大きな声でチームの名前を呼んで応援していた1年生の姿が、佐保の脳裏からどうしても離れなかった。
あの真っ直ぐな瞳。
気がつけば、試合中も帰り支度を始めている時も、佐保の目は自然とその子を目で追ってしまっている。
(私、なんであの子を目で追っちゃうんだろう……)
自分の中に芽生えたそのざわつきの正体が何なのか、まだ言葉にできないまま、佐保はコートの端で小さく息をつく。同じ空気を吸っているだけで、お互いの視線はいつも、見えない糸で引き寄せられるようにすれ違っていた。



