秋晴れの体育館に、キュッキュッとシューズが床を蹴る音が響く。1年の秋、初めてベンチ入りを果たした新人戦。緊張で胸を高鳴らせていた石田桜の視線は、ひとりの選手に釘付けになっていた。
他校の2年生――工藤佐保。
ショートカットのボーイッシュな髪型、コートを端正に駆け抜ける圧倒的なイケメンぶり、そしてミスの一切ない完璧なプレー。すべてが桜の胸を撃ち抜いた。
試合が終わった帰り道、最寄りの電車に揺られながら、桜は心友の凛に向かって、真っ赤になりながらもポツリポツリと本音をこぼした。
「ねえ、凛……聞いてくれる?」
「ん? どうしたの、そんな真剣な顔して」
「あの凄い1番の部長の選手。最初はさ、なんかすごい選手だなあって、アイドルの推し活みたいなものだったの。かっこいいな、応援したいなって。でも、違うの……気づいたら、目で追うたびに胸が苦しくなって、他の人と話してると少しモヤッとしたりして……。いつのまにか、これは恋なんだって感じたの」
初めて自覚した、同性への恋。戸惑う桜の横顔を見て、凛は少しだけ優しく微笑んだ。
「いいじゃん、好きでいていいと思うよ。自分の気持ちに嘘をつく必要ないって」
その言葉に背中を押され、桜は心の中で決意した。この気持ちを無理に隠したりせず、ずっと、佐保先輩を好きでいようと。



