元カレ弁護士の恋事情

 それに、変に噂を立てられたくない。十二年会っていなかった元恋人と、こんな形で再会したなんて。それだけでも十分ややこしいのに、親しげに話しているところを誰かに見られたら、何を言われるかわからない。
 
「相変わらず真面目だな」
 クスリと笑う。
 その笑い方が、ふと昔と重なって不覚にもときめいてしまった。
 ……って、今はそんなことを考えている場合じゃない。
 久我さんは話を戻すように表情を引き締め、パソコンに視線を落とした。
 
「さっきの話だけど、たとえば……自分の意図しないところで見られたとか。家族、友人……あとは……」
 久我さんは少し考えたかと思うと、顔を近づけてきた。

「恋人、とか」

 耳元で囁かれるように言われ、ドキッと心臓が跳ねる。

「そんなの、いません……」

 途端に、頬が熱くなる。
 視線を逸らしながらも、口元が緩みそうになるのを必死に堪える。

「そうか。いないのか」

 ちらりと見ると、ホッとしたような、残念なような顔だった。
 それはどういう意味なの? 
 胸の鼓動が、さっきからなかなか収まってくれない。
 戸惑いを隠すように、髪を耳にかけるフリをした。