元カレ弁護士の恋事情

「彼女が盗作をしていないと証明できれば、次回のコンペに参加できるのでしょうか?」
「それは、まあ……」
 
 社長が口ごもる。
 他の上司たちも顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
 
「しかし、疑惑が出た以上、会社として慎重にならざるを得ません。信用問題に関わりますから」
 
 常務の言葉に、ちくりと胸が痛む。
 しかし久我さんは、頷きながらも反対意見を述べる。

「だからこそです。ここで彼女をコンペから外せば、社員にも世間にも『会社は彼女の盗作を認めた』という印象を与えます」
 
 上司たちは、眉をひそめて久我さんの言葉に耳を傾ける。
 
「必要なのは処分ではありません。事実を明らかにすることです」
 
 久我さんは、まっすぐ前を向いて迷いのない声で言い切った。
 
「次のコンペまでに、証明してみせます」

 私を庇っているわけじゃなくて、ただ弁護士として仕事をまっとうしようとしているだけなのだと思う。けれど今の私は、それだけで十分に胸が熱くなった。
 結局、上司たちは明確に首を縦に振ることはなかった。
 コンペ自粛は保留となったものの、新商品の発売延期は避けられない。
 それでも、久我さんが私と共に証拠を集めることは認めてもらえた。
 今できることをやるしかない。
 ひとりじゃないことに、少しだけ安心した。