元カレ弁護士の恋事情

 気がつけば、もう夕方になっていた。
 楽しい時間は、本当にあっという間だ。
 車がマンションの前に停まる。
 
「今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ」
「すごく楽しかったです」
「俺も楽しかったよ」

 さらりと言われて、胸が少しだけ跳ねる。

「じゃあ……また月曜日、よろしくお願いします」

 久我さんとは仕事上の関係なのだから。
 このデートだって、昔のよしみだ。
 これ以上は期待しちゃいけない。
 車を降りてマンションの入口に向かうと、久我さんの声が聞こえた。
 
「映美」
「はい?」

 振り返ると、車の窓を開けてこちらを見ている。
 
「またデートしよう」

 さらりと言われて、固まってしまう。

「え、あ……」
「じゃあ、また」

 柔らかく微笑んだかと思うと、こちらが返事をする前に窓を閉め走り去ってしまった。

(返事くらい、させてよ……)

 車が走り去っていく方向を見ながら、小さく息を吐いた。
〝誠治くん〟の方から別れようって言ってきたのに。
 どうして今さら、こんなに近づいてくるの……?
 私は熱くなった頬を両手で押さえながら、急いでマンションの中へ入った。