元カレ弁護士の恋事情

 それでも、目的地に到着する頃には、さっきまでの沈んだ気持ちはどこかへ吹き飛んでいた。

「わぁ……!」

 やってきたのは、水族館。
 目の前に広がる大きな水槽を見て、思わず声が弾む。
 館内をゆっくり見て回り、色とりどりの魚を眺めて、ペンギンの行進に笑って、イルカショーまで見た。
 楽しい。いつの間にか仕事のことも、盗作疑惑のことも忘れていた。

 高校時代も、こんな風に久我さんと出かけるのが楽しかったな。
 あの頃とは違う場所で、違う時間を過ごしているのに、不思議とあの頃の気持ちが蘇ってくる。

 そんなことを考えながら歩き、やがて私たちは館内のレストランで昼食を取ることにした。
 料理が運ばれてきて、しばらくは他愛のない話をしていたけれど……やっぱり、気になってしまう。

「あの……そういえば、進捗はどうなってますか……?」
「ん?」
「その、盗作疑惑の……」

 久我さんが一瞬きょとんとしたあと、苦笑した。

「今はデート中だ」
「そうなんですけど……」

 その通りなんだけれど。
 事件のことが気になって、心の底から楽しめていない自分がいる。
 すると久我さんは、少し考えるようにしてから口を開いた。