元カレ弁護士の恋事情

 *

 到着して車の後部座席から降りると、俺は酔ったままの映美に肩を貸しながら玄関まで連れていった。

「ほら、家についたぞ」
「う〜ん?」

 返事をしながらも、目はほとんど開いていない。
 インターホンを押してしばらくすると、控えめな声が聞こえてきた。
 
『はい……?』
「夜分遅くにすみません。現在の家の住所がわからなかったので、映美さんをこちらに送らせていただきました」
 
 しばらくしてドアが開き、出てきたのは五十代くらいの女性だった。
 映美の母親だ。
 高校時代、映美と付き合っていた頃にも、この家に来たことはある。
 もっとも、そのときはご両親がいない時間を選んでいたから、こうして顔を合わせるのは初めてだった。
 
「まあ……まあまあ。ご迷惑をおかけして、すみません」
「いえ、こちらこそすみません。大切な娘さんをこんなになるまで飲ませてしまって」
 
 そう答えると、母親はなぜか少しだけ頬を染めた。
 ……なんだ?
 なんだか嬉しそうに俺を見ている気がする。

「それでは、俺はこれで」
「はい。本当にありがとうございました」

 映美を母親に託し、その場を離れた。
 ドアの内側から鍵をかける音が聞こえ、無事送り届けたことに安心する。