元カレ弁護士の恋事情

 このまま連れて帰ってしまいたい。でも、それはダメだ。
 彼女が今、俺のことをどう思っているかなんてわからない。
 俺は小さく息を吐いた。

「映美、歩けるか?」
「う〜〜ん?」
 
 寝ぼけた感じで返事をする。
 さて、どうするか。
 送るにしても、今の映美の住所がわからない。
 今日、社長室で書いてもらった署名の部分には、名前しか書かれていない。
 映美のスマホを借りて、誰かに迎えに来てもらう……。それが一番現実的だ。
 しかし──
 映美の眠りこけた顔を見て、沸々と欲が湧いてくる。

(誰にも見せたくないな……)

 思わず映美の手を握り、きゅっと力が入る。
 
「……困ったな」

 ふと、昔の記憶が蘇る。
 映美の実家の場所なら知っている。
 ここからはかなり遠いが、車で行けない距離ではない。
 そこまで送ろうと決めて、俺は店の外へ出た。

 夜の風が、火照った頬に心地いい。
 映美を支えながら、ゆっくりと歩く。
 昔と変わらない寝顔を覗き込んで、俺は思わず苦笑した。
「本当に、変わってないな」
 そう呟いてから、俺は車を呼ぶためにスマホを取り出した。