元カレ弁護士の恋事情

 結局、断る理由も見つからなくて、私は久我さんについていった。
 連れてこられたのは、会社から少し離れた場所にある、おしゃれなバー。
 照明は薄暗く、店内には静かな音楽が流れている。
 カウンターに並んで座ると、会社のカフェスペースとはまるで違う雰囲気だった。
 待って、もっと大衆的な居酒屋だと思っていたから、こんなの余計に意識しちゃうじゃない。
 こんなことなら、ちゃんと化粧直ししておくんだった。
 大丈夫、照明は控えめだからそんなに気にならないはず……。
 ごまかすように前髪をいじっていると、目の前に綺麗な色のカクテルが置かれた。

「え……」
「それ、口あたり良くて飲みやすいから」
「あ、ありがとう……」

 慣れてるのかな、なんて勘繰ってしまう。
 
「……じゃ、再会を記念して」
「十二年ぶりの再会に」

 お互いグラスを持ち上げて、乾杯する。

「でも、びっくりした。まさかうちの会社の顧問弁護士が久我さんだったなんて」
「俺も。映美がいるとは知らなかった」

 自然と名前を呼ばれて、胸がひときわ大きく高鳴る。
 ダメだ、もう、心臓が持ちそうにない……!
 きっと、シラフじゃなければまともに会話もできるはず!
 私は、手にしていたグラスを傾けて、ぐいっと一気にカクテルを飲んだ。