元カレ弁護士の恋事情

 コーヒーの香りの漂う会社のカフェスペース。
 他にも席は空いているのに、久我さんは当たり前のようにカウンターに座っていた私の隣に座った。
 あの時と同じ仕草で、でも少しだけ大人びた表情で、あの時と同じように話しかけてくる。
(どうしてそんなに話しかけてくるの……?)

 彼、久我誠治は学生時代の元カレだ。
 でもまさか、こんな形で再会するなんて思ってもみなかった。
 
「君を弁護するからには、君の仕事ぶりを知っておきたい」
「弁護するのは、私ではなく会社でしょう?」
「もちろん。だが、そのためには君の身の潔白を証明する必要がある」

 そう、私たちは、今は弁護士と依頼会社の一社員という関係にすぎない。
 
(私たち、別れたはずでしょう……?)

 それなのに、直視できないくらい、穏やかな微笑みを向けてくる。
 私たちは、もう、あの頃とは違う。
 昔と変わらない距離感で接してくる彼に、戸惑ってしまう。
 
(勘違いさせないで……)

 お願いだから……そんな風に優しくしないで……。