目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です

数か月前。

海外企業との大規模アライアンス案件で、誰もが数字と契約条件だけに目を奪われていた時のことだった

市川真由(いちかわまゆ)が提出した事前分析レポートには、競合他社の財務データだけでなく、現地スタッフの離職率や労働環境、現場の小さな不満の声まで丁寧に拾い上げられた補足資料が添えられていた。

​鷹司は「なぜここまでのデータを?」と訊ねた。

真由は照れくさそうに答える。

「数字上の利益がいくら大きくても、現場で働く人が疲弊する提携なら長続きしませんから」

​鷹司は利益優先のビジネス社会で、常に「その先にある人間」を思いやる真由の真摯さと視野の広さに、初めて「他とは違う」と強い興味を抱いた。