驚いて顔を見つめると、見えないはずやのに真っ直ぐとこっちを見上げて陽は笑った。

優しい微笑み、

決して本来なら10歳の子はしないような大人びた笑い方に、俺の気持ちが少し苦しくなる。

「兄ちゃんはな、蛍がなくん知ってる?」

そんな複雑な俺の心境を知ってか知らずか殊更明るい口調で陽は問いかけて来た。

それと共に繋いでいた手が離されて陽は両手を自分の耳に当てた。

ゆっくりと、瞳を閉じる。

「ほら、な?ないてるん。」