神の手を持つ私は、今日も旦那様を寝落ちさせたい ~極上ヘッドスパで癒していたら、旦那様が極上スパダリに進化しました~

 「嫌……」
 「シエラ、顔を見せてくれ。何が起きているのか確かめたい」
 「見ないでください……!」

 自分でも驚くほど声が震える。

 「お願いだから……旦那様には、見られたくない……」

 どうして真っ先にそう思ったのか、自分でも分からなかった。
 ただ、テオドアにだけは、この姿を見られることがどうしようもなく怖かった。

 今夜の自分を、テオドアは似合っていると言ってくれた。
 それなのに、こんな姿になった自分を見て――もし、幻滅されたら?
 
 「シエラ」

 再び名を呼ばれ、手首へそっと指が触れる。

 「嫌……!」

 それでもテオドアは離れなかった。
 顔を隠すシエラの両手を掴むと、無理にではなく、ゆっくりと下ろしていく。

 「俺を見ろ」

 恐る恐る目を開けると、紫の瞳がまっすぐ自分を見ていた。
 嫌悪も、戸惑いもない。
 変わり果てていくシエラの顔を前にしても、テオドアは一度たりとも目を逸らさなかった。

 「君の姿がどう変わろうと、関係ない」
 「……え?」
 「俺の妻は、君以外にありえない」

 その言葉に、息が止まる。
 どんな姿になっても、この人は自分をシエラとして見てくれる。

 「旦那様……」

 そう思った途端、泣きそうになるほど嬉しかった。

 その騒ぎに紛れるように、エリザが会場へ戻ってきた。
 変わり果てていく姉を見つけた瞬間、扇の陰で口元をゆっくりと吊り上げる。
 愉快でたまらない、とその瞳が語っていた。

 「……っ」

 突然、シエラの身体から力が抜ける。

 「シエラ!」

 崩れ落ちる寸前、テオドアが身体を抱き留めた。

 「……苦し……」

 うまく息ができない。身体の内側から何か大切なものを、根こそぎ奪われていくようだった。

 「シエラ、しっかりしろ!」

 いつもなら落ち着いているテオドアの声が、はっきりと揺れている。
 周囲の騒ぎを聞きつけたグランツが、人垣を掻き分けるように駆け寄ってきた。

 「退け! 診せろ!」

 シエラの前へ膝をつき、身体へ手をかざす。
 魔力の流れを探った直後、グランツの顔色が変わった。

 「これは……見た目だけの問題じゃない」
 「どういうことです」
 「生命力そのものが削られている!」

 テオドアの目が見開かれる。

 「……何?」
 「このままでは――」

 言葉の途中で、シエラの身体が大きく震えた。