神の手を持つ私は、今日も旦那様を寝落ちさせたい ~極上ヘッドスパで癒していたら、旦那様が極上スパダリに進化しました~

 それから数日。
 エリザは、人目を忍んで王都の裏通りを歩き回っていた。

 最初は、古い魔術具を扱う店をいくつも訪ねた。
 けれど、人の容姿を変えるような品について尋ねても、どこでもまともに取り合ってはもらえない。

 中には露骨に顔をしかめ、「そんなものを探しているなら帰ってくれ」と追い返す店まであった。
 それでも諦めず、金を惜しまず情報を買い、さらにその紹介を辿っていく。

 そうしてようやく教えられたのが、王都の外れにある一軒の店だった。
 看板すら出ていない、薄暗い建物。
 表向きは古物商らしいが、正規の市場には決して流れない魔術具を扱っているという。

 もちろん、誰でも入れる場所ではない。
 紹介された合言葉を告げ、さらにかなりの金を渡して、ようやく奥へ通されたのだ。

 重い扉が閉まる。
 薄暗い店内を見回しながら、エリザは低く告げた。

 「探しているものがあるの」

 そう告げると、店主はしばらくエリザを値踏みするように眺めたあと、奥からひとつの手鏡を取り出した。
 黒銀の蔦が絡みつくような装飾。
 持ち手の根元には、暗い赤紫色の宝石が埋め込まれている。

 「……鏡?」
 「少々、曰くつきの品でございます」

 店主が鏡を裏返す。
 そこには、小さな蓋がついていた。

 「ここへ対象の髪などを入れれば、その者へ呪いを向けることができるとか」
 「呪い……」

 エリザの視線が、鏡へ釘づけになる。

 「もちろん、私どもも詳しいことまでは存じません。扱いを誤れば、使用者にも相応の代償があると聞いておりますが」

 制止するような言葉も、今のエリザには届かなかった。
 鏡面を見つめているうちに、その向こうへシエラの姿が浮かぶ。

 美しく着飾り、テオドアの隣に立つ姉。
 人々から称えられ、羨望の眼差しを向けられている姿。

 「……これなら」

 掠れた声が漏れる。
 
 お姉様を、以前の姿へ戻せる。
 また誰からも見向きもされない、醜い姉に――。

 「これをもらうわ」

 エリザは迷うことなく、鏡へ手を伸ばした。