テオドアの表情は変わらない。
それでもエリザは、確信に満ちた様子で彼へ手を伸ばした。
「ですので、私が――」
「必要ない」
短い言葉とともに、エリザの手が空を切る。
テオドアはその手を避け、そのまま真っ直ぐシエラのもとへ歩いてきた。
「旦那様」
隣に立ったテオドアを、シエラが見上げる。
テオドアはそんなシエラに手を差し出し、そっと立たせた。
「その役割は、妻が十分に果たしてくれている」
「な……っ」
あっけなく拒否され、エリザの顔がかっと赤みを増す。
しかしすぐ、気を取り直したようににこりと笑う。
「で、ですがお姉様がすることは、ただのマッサージなのでしょう? 魔力調律とは比べ物にならないはずで——」
どこか引き攣った笑みで語るエリザを前に、シエラの胸に小さな迷いが生まれる。
エリザが言うことも、もっともではあった。
自分のヘッドスパがテオドアの身体にいい影響を与えていることは、もう疑っていない。
しかし、そこにただのヘッドスパ以上の力があるのかは、まだ分かっていなかった。
一方、魔力調律は正式に認められた希少な力だ。
以前、テオドアは魔力調律も効かなかったと言っていた。
けれど、以前よりずっと体調が整った今なら、もしかしたら――。
「話がそれだけなら、ここで失礼する。アルバ、帰りの準備を——」
二人を追い返そうとしたテオドアに、シエラが呼び掛ける。
「……旦那様」
「一度だけ、受けてみてもいいんじゃないでしょうか」
「何だって?」
テオドアが、訝しげにシエラを見つめる。
「今なら、魔力調律の効果も出るかもしれません。そちらの方が、より旦那様には合うことも……」
本音を言えば、これ以上エリザに関わってほしくない。
けれど、そんな自分の気持ちだけで、テオドアがもっと楽になれるかもしれない可能性を潰したくはなかった。
「それが旦那様のためになるなら、私は試してみてほしいです」
テオドアはしばらくシエラを見つめていた。
やがて、小さく息を吐く。
「……君がそう言うなら、一度だけだ」
「ありがとうございます」
シエラがほっと笑う。
その隣で、エリザは今度こそ勝ち誇ったように微笑んでいた。
それでもエリザは、確信に満ちた様子で彼へ手を伸ばした。
「ですので、私が――」
「必要ない」
短い言葉とともに、エリザの手が空を切る。
テオドアはその手を避け、そのまま真っ直ぐシエラのもとへ歩いてきた。
「旦那様」
隣に立ったテオドアを、シエラが見上げる。
テオドアはそんなシエラに手を差し出し、そっと立たせた。
「その役割は、妻が十分に果たしてくれている」
「な……っ」
あっけなく拒否され、エリザの顔がかっと赤みを増す。
しかしすぐ、気を取り直したようににこりと笑う。
「で、ですがお姉様がすることは、ただのマッサージなのでしょう? 魔力調律とは比べ物にならないはずで——」
どこか引き攣った笑みで語るエリザを前に、シエラの胸に小さな迷いが生まれる。
エリザが言うことも、もっともではあった。
自分のヘッドスパがテオドアの身体にいい影響を与えていることは、もう疑っていない。
しかし、そこにただのヘッドスパ以上の力があるのかは、まだ分かっていなかった。
一方、魔力調律は正式に認められた希少な力だ。
以前、テオドアは魔力調律も効かなかったと言っていた。
けれど、以前よりずっと体調が整った今なら、もしかしたら――。
「話がそれだけなら、ここで失礼する。アルバ、帰りの準備を——」
二人を追い返そうとしたテオドアに、シエラが呼び掛ける。
「……旦那様」
「一度だけ、受けてみてもいいんじゃないでしょうか」
「何だって?」
テオドアが、訝しげにシエラを見つめる。
「今なら、魔力調律の効果も出るかもしれません。そちらの方が、より旦那様には合うことも……」
本音を言えば、これ以上エリザに関わってほしくない。
けれど、そんな自分の気持ちだけで、テオドアがもっと楽になれるかもしれない可能性を潰したくはなかった。
「それが旦那様のためになるなら、私は試してみてほしいです」
テオドアはしばらくシエラを見つめていた。
やがて、小さく息を吐く。
「……君がそう言うなら、一度だけだ」
「ありがとうございます」
シエラがほっと笑う。
その隣で、エリザは今度こそ勝ち誇ったように微笑んでいた。


