神の手を持つ私は、今日も旦那様を寝落ちさせたい ~極上ヘッドスパで癒していたら、旦那様が極上スパダリに進化しました~

 「やはり、偶然ではなさそうだな」

 グランツが難しい顔で呟く。

 「私だけなら、たまたま症状が和らいだ可能性も考えられた。だが、ルシアンにもこれほどはっきり効果が出たとなれば話は別だ」
 「……俺も同じだ」

 それまで黙っていたテオドアが、不意に口を開いた。

 「旦那様も?」

 シエラが振り返ると、テオドアは自分の右手へ視線を落とした。

 「君の施術を受けるようになってから、以前より魔力の流れが滑らかになっている」
 「魔力まで……?」
 「ああ。先日の夜会で障壁を張った時にも感じた。以前よりずっと自然に魔力が応じた」

 シエラは目を丸くする。

 「最初は、眠れるようになって体調が戻った影響だと思っていた」

 テオドアの視線がグランツとルシアンへ移る。

 「だが、二人にも似た変化が起きているなら、それだけではないのかもしれない」

 グランツがゆっくりと頷いた。

 「そういうことだ」

 そして改めて、シエラへ向き直る。

 「夫人。やはり、あなたの施術は通常の魔力調律とは違うようだ」
 「やっぱり、そうなんでしょうか……?」
 「魔力調律は、術者自身の魔力を相手へ送り込み、乱れた流れを外側から整えるものだ。だが、あなたはほとんど自分の魔力を使っていない」

 シエラは思わず、自分の両手を見下ろした。

 「でも私、本当に普通にヘッドスパをしているだけなんですけど……」
 「そこが分からんのだ」

 グランツは腕を組み、考え込むように眉を寄せる。

 「外から魔力を与えているわけではない。それなのに、施術を受けた者自身の魔力の流れが変わっている」

 一度言葉を切り、慎重に続けた。

 「相手の中にあるものへ何らかの働きかけをして、本来の流れを取り戻すよう促している――そう考えるのが、一番近いのかもしれんな」
 「私が……そんなことを?」
 「まだ仮説だ。断定するには早い」

 そう言われても、シエラには実感がなかった。
 前世と同じように、苦しんでいる場所を探して手を動かしているだけだ。
 それでも、三人に同じ変化が起きている以上、自分の手にはまだ知らない何かがあるのかもしれない。

 「……難しいことは、まだよく分かりませんけど」

 シエラは自分の両手を見つめたまま、少しだけ笑う。

 「でも、皆さんが楽になってくださるなら、それで十分です」

 その言葉に、ルシアンがふっと目を細めた。

 「俺も同感です。少なくとも、何年も付きまとっていた頭痛が消えた。それだけでも十分すぎるくらいですから」

 その言葉に、シエラの表情が自然と和らぐ。