神の手を持つ私は、今日も旦那様を寝落ちさせたい ~極上ヘッドスパで癒していたら、旦那様が極上スパダリに進化しました~

 「それって、やっぱり普通じゃないわよね」

 シエラはカップを置き、アルバを見上げた。

 「何か、原因があるの?」

 アルバはすぐには答えなかった。
 いつもの柔らかな笑みが、静かに消える。

 「……旦那様には、少し事情が――」
 「何をしている」

 不意に背後から低い声が落ちてきた。

 「わっ!」

 振り返ると、庭園の向こうにテオドアが立っていた。
 シエラを見たあと、その目が傍らのアルバへ移る。

 「旦那様」

 アルバが涼しい顔で一礼した。
 テオドアは二人を交互に眺め、眉を寄せる。

 「……随分、楽しそうだな」
 「ええ。奥様とは、色々と積もる話がありまして」
 「……何?」

 低くなった声にも、アルバはまるで動じない。
 何事もなかったかのように新しいカップを取り出し、紅茶を注いだ。

 「ですが、僕はそろそろ戻らなくては」

 淹れたばかりの紅茶をテーブルへ置く。

 「旦那様、奥様。どうぞごゆっくり」
 「え、アルバ?」

 シエラが呼び止める間もなく、アルバはにこやかに一礼して立ち去ってしまった。

 (行っちゃった)

 テオドアはその背中をしばらく無言で見送っていた。
 妙な沈黙が落ち、シエラは空いた椅子を手で示す。

 「えーっと……よかったら、座ります?」

 テオドアは一瞬迷ったあと、無言で向かいの席へ腰を下ろした。
 けれど紅茶には手をつけず、ぶっきらぼうに尋ねる。

 「……アルバと、何を話していたんだ」
 「旦那様のことですよ?」
 「……俺?」

 意外だったのか、紫色の瞳が見開かれる。

 「はい」

 シエラが何の気なしに頷くと、テオドアはしばらく黙り込んだ。やがて、どこか落ち着かない様子で目を逸らす。
 その反応の意味など分からないまま、シエラは楽しげに微笑んだ。

 「そういえば、旦那様とこうしてお茶するの、初めてですね」
 「……そうだな」