神の手と呼ばれた私は、今日も旦那様を寝落ちさせたい ~極上ヘッドスパで癒していたら、旦那様が極上スパダリに進化しました~

 カーテンの隙間から朝日が差し込み、テオドアは眩しさにゆっくりと目を開けた。
 見慣れない天井をぼんやりと見上げながら、しばらくのあいだ、自分がどこにいるのか分からなかった。

 けれど、窓辺を満たす白い光に気づいた瞬間、意識が急速に覚醒する。

 (……朝?)

 勢いよく身体を起こした。

 昨夜、この部屋を訪れたことまでは覚えている。
 シエラに寝台へ寝かされ、聞いたこともない“ヘッドスパ”なるものを受けた。そして――その先の記憶がない。

 夜中に目を覚ました覚えもなければ、いつものように長い夜を持て余した記憶もなかった。

 (まさか……俺は、眠っていたのか?)

 しかも、夜から朝まで一度も目を覚ますことなく眠り続けていたらしい。
 こんなことは、一度だってなかった。

 愕然としていると、身体の片側に妙な重みがかかっていることに気づく。
 視線を落とし、テオドアは眉を寄せた。

 シエラは寝台へ半ば乗り上げ、テオドアの脇腹にもたれかかるように眠っていた。
 片腕まで無防備に彼の身体へ投げ出されている。
 亜麻色の髪もすっかり乱れ、どう見ても快適な寝姿とは言い難い。

 「……何なんだ、これは」

 呆れた声を漏らしながらも、なぜかすぐには視線を外せなかった。

 昨夜、自ら切った前髪のおかげで、これまで隠されていたシエラの顔がよく見えた。
 長い睫毛に柔らかな頬。眠っているせいか、どこか幼さの残る顔立ちだ。

 (なぜ、これを隠していたんだ)

 「ん……」

 シエラが身じろぎし、テオドアははっと視線を逸らした。

 (……何をしているんだ、俺は)

 すると今度は、昨夜から今朝にかけて起きたことの異常さが、改めて意識に浮かび上がった。

 自分は眠った。あれほど深く、何時間も。
 薬でも、魔力調律でも叶わなかったことが、頭を揉まれただけで起きたというのか。

 到底、納得できない。
 テオドアは自分にかけられていた毛布を掴むと、そのまま強く引いた。

 「きゃっ!?」

 支えを失ったシエラが、寝台の縁からずるりと滑り落ちる。

 「起きろ」
 「はえ……?」

 床へ座り込んだまま、シエラがぼんやりと顔を上げた。
 髪は乱れ、まだ夢の中に片足を残しているような顔で何度か瞬きを繰り返す。

 「え……朝……?」

 やがて昨夜のことを思い出したのか、その表情がぱっと明るくなった。

 「あ! 昨晩はよく眠れましたか?」

 嬉しそうに尋ねてくるシエラへ、テオドアは無言のまま鋭い視線を向けた。