神の手を持つ私は、今日も旦那様を寝落ちさせたい ~極上ヘッドスパで癒していたら、旦那様が極上スパダリに進化しました~

 「……そうですよ」
 「シエラ?」
 「私の人生なんですから。旦那様の隣にいるかどうかも、私が決めます」

 紫の瞳が驚いたように揺れる。

 「だから、私のためだって勝手に遠ざけないでください。ちゃんと、私にも選ばせてください」

 テオドアはしばらく何も言わなかった。
 やがて、その眼差しにどこか柔らかな色が宿る。

 「……ああ」

 そして、握った手を離さないまま静かに続けた。

 「なら、俺ももう逃げない」
 「……え?」
 「君を遠ざけることも、欲しいと思う気持ちをなかったことにもしない」

 「……っ」

 また、顔が熱くなる。
 それでも今度は、視線を逸らさなかった。
 窓の外から差し込む月明かりが、二人の間を淡く照らしている。

 「シエラ」
 「……はい」

 静けさの中で、繋いだ手の温もりだけがやけに熱く感じられた。

 「——君が好きだ」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
 けれど、驚きよりも先に浮かんだのは、ずっと前から知っていた答えだった。

 (……本当は、もうとっくに気づいてる)

 守ってもらった時に胸が高鳴ったことも、他の女性に囲まれているのを見て落ち着かなかったことも、あの夜に離れていかれたことが悲しかった理由も。

 全部、答えは出ていた。
 シエラは繋いだ手に、そっと力を込める。

 「……私も」

 一度、ゆっくりと息を吸った。

 「私も、旦那様が好きです」

 テオドアの瞳が揺れる。

 「これからも、ずっと隣にいたいです」

 しばらく、どちらも何も言わなかった。
 けれど、繋いだ手だけは離れない。
 やがてテオドアのもう片方の手が、そっとシエラの頬へ触れた。

 「……旦那様」

 指先が頬をゆっくりとなぞる。
 今までとはまるで違う触れ方だと分かってしまい、シエラの鼓動が一気に速くなる。
 テオドアは目を逸らさないまま、静かに告げた。

 「今度は……ちゃんと、君に触れたい」
 「……っ」

 あの日とは違う。
 今度のテオドアは、シエラの返事を待つように、ただまっすぐこちらを見つめていた。
 頬が熱くなるのを感じながら、それでもシエラは小さく頷く。

 「……はい」

 その返事を聞いて、テオドアがゆっくりと顔を近づける。
 シエラも、そっと目を閉じた。

 そして——唇が重なった。