「失礼いたします」
扉を開けたアルバは、目を覚ましているシエラを見るなり一瞬目を見開いた。
「奥様……お目覚めになられたのですね。本当によかったです」
「アルバ。私、どれくらい寝てたの?」
「三日ほどです」
「……三日?」
てっきり一晩か、長くても半日ほどだと思っていた。
驚きながら自分の手を見下ろすシエラへ、アルバが静かに続ける。
「呪いによって一度魂が肉体から離れた影響で、お身体がひどく消耗していたようです。命に別状はないと診断されていましたが……屋敷の者も皆、随分心配しておりました」
「みんなが……」
シエラは申し訳なさそうに眉を下げた。
けれどアルバは、そんな彼女を安心させるように微笑む。
「奥様がお元気になられたと知れば、皆それだけで喜びますよ」
そう言ってから、アルバの視線がすっと隣へ移った。
「もっとも、一番心配していたのは旦那様でしょうがね」
「アルバ」
すぐに低い声が飛ぶ。
しかしアルバは気にした様子もなく、盆をテーブルへ置いた。
「旦那様も、夜会で魔力を酷使された反動で絶対安静を言い渡されていたのですが」
「えっ?」
シエラは勢いよくテオドアを振り返る。
「ほとんどこちらから動こうとなさいませんでした」
淡々と返すアルバに、テオドアは小さく眉を寄せた。
けれど否定しきれないあたり、本当にずっとここにいてくれたのだろう。
「……また、濃いのができちゃってますね」
せっかく薄くなっていたはずの隈が、以前ほどではないにせよはっきりと戻っている。
自分の目元を指でとん、と示すと、テオドアは僅かに視線を伏せた。
「俺は君がいないと眠れないからな」
あまりにも自然に言われ、シエラは目を丸くする。
けれど、至って真面目なその顔を見ているうちに、思わず小さな笑いが零れた。
「……ふふ」
「何だ」
「いいえ」
まだ笑みを残したまま、シエラは首を振った。
「そばにいてくれて、ありがとうございます」
テオドアは、シエラを見つめたまま一度だけ瞬いた。
「でも、もう大丈夫です。私、三日もたっぷり寝たんですよね?」
「ああ」
「だったら、ばっちり元気です」
安心させるように笑ってみせると、テオドアはしばらくシエラの顔を見つめていた。
シエラは、ここにいる。目の前で、こうして笑っている。
その事実を噛みしめるように、テオドアの表情にもようやく安堵が滲んだ。
扉を開けたアルバは、目を覚ましているシエラを見るなり一瞬目を見開いた。
「奥様……お目覚めになられたのですね。本当によかったです」
「アルバ。私、どれくらい寝てたの?」
「三日ほどです」
「……三日?」
てっきり一晩か、長くても半日ほどだと思っていた。
驚きながら自分の手を見下ろすシエラへ、アルバが静かに続ける。
「呪いによって一度魂が肉体から離れた影響で、お身体がひどく消耗していたようです。命に別状はないと診断されていましたが……屋敷の者も皆、随分心配しておりました」
「みんなが……」
シエラは申し訳なさそうに眉を下げた。
けれどアルバは、そんな彼女を安心させるように微笑む。
「奥様がお元気になられたと知れば、皆それだけで喜びますよ」
そう言ってから、アルバの視線がすっと隣へ移った。
「もっとも、一番心配していたのは旦那様でしょうがね」
「アルバ」
すぐに低い声が飛ぶ。
しかしアルバは気にした様子もなく、盆をテーブルへ置いた。
「旦那様も、夜会で魔力を酷使された反動で絶対安静を言い渡されていたのですが」
「えっ?」
シエラは勢いよくテオドアを振り返る。
「ほとんどこちらから動こうとなさいませんでした」
淡々と返すアルバに、テオドアは小さく眉を寄せた。
けれど否定しきれないあたり、本当にずっとここにいてくれたのだろう。
「……また、濃いのができちゃってますね」
せっかく薄くなっていたはずの隈が、以前ほどではないにせよはっきりと戻っている。
自分の目元を指でとん、と示すと、テオドアは僅かに視線を伏せた。
「俺は君がいないと眠れないからな」
あまりにも自然に言われ、シエラは目を丸くする。
けれど、至って真面目なその顔を見ているうちに、思わず小さな笑いが零れた。
「……ふふ」
「何だ」
「いいえ」
まだ笑みを残したまま、シエラは首を振った。
「そばにいてくれて、ありがとうございます」
テオドアは、シエラを見つめたまま一度だけ瞬いた。
「でも、もう大丈夫です。私、三日もたっぷり寝たんですよね?」
「ああ」
「だったら、ばっちり元気です」
安心させるように笑ってみせると、テオドアはしばらくシエラの顔を見つめていた。
シエラは、ここにいる。目の前で、こうして笑っている。
その事実を噛みしめるように、テオドアの表情にもようやく安堵が滲んだ。


