今夜も執事は、お嬢様を手放さない

「碧ぇ……あと五分……」

「なりません」

「ええー……」

「本日は登校日です。お嬢様があと五分とおっしゃると、本当に五分で済んだためしがございません」

「今日は済むかも……」

「済みません」

 きっぱり言い切られ、ことはは唇を尖らせた。

「むぅ……」

「そのようなお顔をなさっても、駄目です」

「ちょっとくらいいいのに……」

「少し甘やかすと、すぐに際限がなくなりますので」

「甘やかしてる自覚あるんだ……」

「ございますよ」

 さらりと認められて、ことははきょとんとする。

「あるの?」

「ええ。私がお嬢様に甘いことくらい、自覚しております」

 そんなふうに当然みたいに言われると、なんだか落ち着かない。ことははまばたきを繰り返してから、小さく首をかしげた。

「でも、碧はみんなにも優しいよ?」

「仕事ですので」

「私にもお仕事で優しいの?」