翌日、夕飯を食べ終えた頃にいっくんは金魚のエサを持ってやって来た。
「こうやって少しずつ指でパラパラってあげてね」
「わかった」
私が教わりながら小さな粒を水面にまくと、いっくんは「うん、上手」と褒めてくれた。
縁側に座り、祖母が淹れてくれた麦茶を飲みながら、いっくんは星座についても教えてくれる。
「あの明るく見える星は一等星」
「いっとうしょうってこと?」
「うん、そうだね。ゆりちゃん、三角形の星を見つけられる? 明るい星を三つ」
えっと……と私は空に目を凝らして指を差す。
「あれと、あっちと、あそこにも!」
「うん、正解」
私は誇らしげに笑う。
いっくんは私が子どもだからといって「難しくてわからないだろう」と決めつけたりしない。
いつも私に真っ直ぐ接してくれる。
幼心にそれを感じて、だから私はいっくんが好きだったのかもしれない。
「あの三つの星は夏の大三角って呼ばれているんだ。こと座のベガと、わし座のアルタイル、それからはくちょう座のデネブ。ベガは織姫、アルタイルは彦星なんだよ」
「おりひめさまって、たなばたの?」
「そう」
「すごい! わたし、おとぎのくにのおはなしだとおもってた。ほんとうにあるのね?」
そんな私にいっくんは優しく微笑む。
「本当にあるよ、とても遠くにね。アルタイルは十七光年離れていて、十七年前の光が今ようやく僕たちの目に届いている。ベガは二十五年前の光、デネブは千四百年前に放たれた光なんだ」
「せんよんひゃく? わたし、おばあちゃんになってもそんなにながくいきられないよ?」
「ははっ、僕もだよ。あの星から見たら人間の一生なんてほんの一瞬。そんな中で僕がゆりちゃんと出会えたことは、ものすごい奇跡なんだ」
「そっか、うれしいね」
「ああ、嬉しいね」
虫の声に紛れて二人で静かに笑い合ったあの夜は、幼い私の中では永遠だった。
「こうやって少しずつ指でパラパラってあげてね」
「わかった」
私が教わりながら小さな粒を水面にまくと、いっくんは「うん、上手」と褒めてくれた。
縁側に座り、祖母が淹れてくれた麦茶を飲みながら、いっくんは星座についても教えてくれる。
「あの明るく見える星は一等星」
「いっとうしょうってこと?」
「うん、そうだね。ゆりちゃん、三角形の星を見つけられる? 明るい星を三つ」
えっと……と私は空に目を凝らして指を差す。
「あれと、あっちと、あそこにも!」
「うん、正解」
私は誇らしげに笑う。
いっくんは私が子どもだからといって「難しくてわからないだろう」と決めつけたりしない。
いつも私に真っ直ぐ接してくれる。
幼心にそれを感じて、だから私はいっくんが好きだったのかもしれない。
「あの三つの星は夏の大三角って呼ばれているんだ。こと座のベガと、わし座のアルタイル、それからはくちょう座のデネブ。ベガは織姫、アルタイルは彦星なんだよ」
「おりひめさまって、たなばたの?」
「そう」
「すごい! わたし、おとぎのくにのおはなしだとおもってた。ほんとうにあるのね?」
そんな私にいっくんは優しく微笑む。
「本当にあるよ、とても遠くにね。アルタイルは十七光年離れていて、十七年前の光が今ようやく僕たちの目に届いている。ベガは二十五年前の光、デネブは千四百年前に放たれた光なんだ」
「せんよんひゃく? わたし、おばあちゃんになってもそんなにながくいきられないよ?」
「ははっ、僕もだよ。あの星から見たら人間の一生なんてほんの一瞬。そんな中で僕がゆりちゃんと出会えたことは、ものすごい奇跡なんだ」
「そっか、うれしいね」
「ああ、嬉しいね」
虫の声に紛れて二人で静かに笑い合ったあの夜は、幼い私の中では永遠だった。



