私の運命の人

それから私は身の回りの荷物を持って、いっくんの住むマンションへと二人で向かった。
明日の朝はここから一緒に車で出勤すれば、いっくんは私のアパートに寄らずに済む。
もう一人で電車通勤できると私が言ってもいっくんが許してくれず、話し合った結果そうなった。
だけど本音は、ずっとずっといっくんと一緒にいたかったから。
だってせっかく再会できた今、まだまだ話したいことがたくさんあり過ぎる。
広いいっくんのベッドを借りて横になり、いっくんはすぐそばのフロアに布団を敷いて二人で夜通しおしゃべりした。

「いっくん、どうりで格付け大会で優勝したわけよね。だってお坊ちゃまだもん。毎日松坂牛食べてたんでしょ?」
「さすがに毎日ではなかったよ。でも君のおばあさんに夕食をごちそうになることも多くてね、そちらの方が美味しかった。親子丼が特に美味しくて、作り方を教わったんだ」
「やっぱりね。だってあんなに同じ味なんて、あり得ないよ。それなのに、たまたまだ、とか苦しい言い訳して」
「ははは! ごめん。僕もまさか、君がそんなにも親子丼の味を見極められるとは思わなくて。君こそ、親子丼格付け大会で優勝できるよ」
「おばあちゃんの味、限定でね。ねえ、いっくん。今度一緒におばあちゃんに会いに行こうよ」

え、いや……といっくんは口ごもる。

「どんな顔して挨拶すればいいのか。散々お世話になったのに、黙っていなくなるなんて」
「どんな顔って、そんな顔でいいよ。大丈夫、おばあちゃん大喜びするよ」
「そうかな?」
「もちろん!」

するといっくんは半身を起こして私を見つめた。

「ゆりちゃん」
「ん? 何?」
「二人でおばあさんに会いに行くのは、もう少し待って。きちんと挨拶したいんだ」
「いいけど、そんなに準備が必要なの? 大げさだな。普段着でふらっと遊びに行けばいいよ」
「そんなわけにはいかない。ほら、そろそろ寝よう。明日も仕事でしょ?」
「なあに? 急に保護者みたいになった。じゃあ明日も帰って来たら、たくさん話をしてくれる?」
「いいよ」

私は途端に笑顔になる。

「うん! じゃあ寝るね。おやすみ」
「おやすみ、ゆりちゃん」

目を閉じた私は、思い切り頬が緩んでいるのがわかった。
そしてそのまま、幸せな気分で眠りについた。