翌日から学校が始まったのだが、三十木先生はなんと朝私のアパートまで車でやって来た。
私を高校へ送ってから自分の学校に出勤すると言う。
「そんな、そこまでしていただくわけにはいきません」
「それでは僕の気が済まない。いいから早く。遅刻してしまう」
それを言われては仕方ない。
私は荷物を手に松葉づえをついて玄関に向かう。
昨日のうちに三十木先生に言われて、肩から斜め掛けできるカバンで出勤することにしていた。
先生は私が玄関のカギをかけるのを待ってから、慣れた様子で私を抱き上げる。
「あの、ちょっと。誰かに見られますから」
そう言っても聞き流されてしまう。
スタスタと足早にマンションを出ると車に私を乗せ、あっという間に発進させた。
車での行き方はさっぱりわからず、窓の外の景色を見ているうちに見慣れた風景へと変わる。
「この道、こんなところに出るんですね」
「そう。職員の駐車場へは裏門のここから入るんです」
「なるほど」
先生は車を停めて降りると、助手席のドアを外から開けてくれた。
「ありがとうございました」
そう言って見送ろうとすると、先生は「校長先生にひと言挨拶しておきます』と言って歩き出す。
「え? 何をですか?」
私は戸惑いつつあとを追った。
「おや? 三十木先生じゃないですか!」
長く務めている用務員さんが驚いたように近づいて来て、三十木先生も足を止める。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「元気元気! 先生、ここに戻って来られたんですか?」
「残念ながら違うんです。でもまた顔を出しますね」
「いつでもお待ちしていますよ」
三十木先生は職員室へも迷うことなく真っ直ぐに向かう。
「失礼いたします。N校の三十木と申しますが、校長先生はいらっしゃいますか?」
まだ人もまばらな職員室の奥で、校長が立ち上がった。
「はい、私ですが」
「朝早くから申し訳ありません。実は三嶋先生に、私の不注意によりケガを負わせてしまいました。ご覧の通り、松葉づえが必要な状況です。つきましては充分にご配慮いただき、無理ない範囲での勤務をお願いできますでしょうか?」
「おや、三嶋先生、どうされました?」
「捻挫と診断されました。足首をサポーターで固定し、安静が必要とのことです」
「わかりました。それでは三嶋先生にはエレベーターを使用してもらいます。授業も椅子に座って行うことを、生徒や先生に周知しておきましょう」
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」
三十木先生は深々と頭を下げると私を振り返る。
「くれぐれも無理せず。帰りも迎えに来るから待っていなさい」
「え、あの!」
私に返事をする隙を与えず、先生は足早に去って行った。
私を高校へ送ってから自分の学校に出勤すると言う。
「そんな、そこまでしていただくわけにはいきません」
「それでは僕の気が済まない。いいから早く。遅刻してしまう」
それを言われては仕方ない。
私は荷物を手に松葉づえをついて玄関に向かう。
昨日のうちに三十木先生に言われて、肩から斜め掛けできるカバンで出勤することにしていた。
先生は私が玄関のカギをかけるのを待ってから、慣れた様子で私を抱き上げる。
「あの、ちょっと。誰かに見られますから」
そう言っても聞き流されてしまう。
スタスタと足早にマンションを出ると車に私を乗せ、あっという間に発進させた。
車での行き方はさっぱりわからず、窓の外の景色を見ているうちに見慣れた風景へと変わる。
「この道、こんなところに出るんですね」
「そう。職員の駐車場へは裏門のここから入るんです」
「なるほど」
先生は車を停めて降りると、助手席のドアを外から開けてくれた。
「ありがとうございました」
そう言って見送ろうとすると、先生は「校長先生にひと言挨拶しておきます』と言って歩き出す。
「え? 何をですか?」
私は戸惑いつつあとを追った。
「おや? 三十木先生じゃないですか!」
長く務めている用務員さんが驚いたように近づいて来て、三十木先生も足を止める。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「元気元気! 先生、ここに戻って来られたんですか?」
「残念ながら違うんです。でもまた顔を出しますね」
「いつでもお待ちしていますよ」
三十木先生は職員室へも迷うことなく真っ直ぐに向かう。
「失礼いたします。N校の三十木と申しますが、校長先生はいらっしゃいますか?」
まだ人もまばらな職員室の奥で、校長が立ち上がった。
「はい、私ですが」
「朝早くから申し訳ありません。実は三嶋先生に、私の不注意によりケガを負わせてしまいました。ご覧の通り、松葉づえが必要な状況です。つきましては充分にご配慮いただき、無理ない範囲での勤務をお願いできますでしょうか?」
「おや、三嶋先生、どうされました?」
「捻挫と診断されました。足首をサポーターで固定し、安静が必要とのことです」
「わかりました。それでは三嶋先生にはエレベーターを使用してもらいます。授業も椅子に座って行うことを、生徒や先生に周知しておきましょう」
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」
三十木先生は深々と頭を下げると私を振り返る。
「くれぐれも無理せず。帰りも迎えに来るから待っていなさい」
「え、あの!」
私に返事をする隙を与えず、先生は足早に去って行った。



