私の運命の人

三〇分後にピンポンとインターフォンが鳴り、私はそろそろと玄関に向かう。

「はーい、今開けます」

わざと元気な声で言いつつ、痛みに顔をしかめた。
ドアを開けると、先生は昨日と同じように眼鏡をかけていなかった。

「おはようございます。わざわざすみません」

にっこり笑って挨拶すると、先生は視線を落として私の右足を見たあと、その場にしゃがみ込む。

「え? あの……」
「腫れが酷くなってる。痛みもあるんだろう?」
「でも随分良くなりました」

すると先生は立ち上がり、右手で私の左の頬に触れる。

「顔色が良くない。どうしてそう痩せ我慢をする?」
「我慢なんてしてません。本当にもう大丈夫です」
「……わかった。それなら医者にそう診断してもらおう」
「え?」
「休日に診てもらえるところを探しておいた。これから行こう」
「いえ、あの」

戸惑う私をよそに、先生は靴を脱ぐとローテーブルにあった私のスマートフォンを手にし、辺りを見渡してからハンガーラックに掛けてあったバッグを手にした。

「お財布はこの中? マイナンバーカードも入ってる?」
「はい。でも、えっと」
「よし、行こう。左足だけ靴履いて」

先生は電気やガスを確認すると玄関のカギとバッグを私の手に握らせ、私が左足をスニーカーに入れるや否や一気に抱き上げた。

「カギ、締めて」
「あ、はい」

私が言われた通りにカギをかけると、そのままエレベーターへと向かい「ボタン押して」と言う。

「はい」

一階に下りると停めてあった車に近づき、そっと私の左足をドアの前で下ろした。
ポケットから車のキーを取り出してロックを解除すると、助手席のドアを開けて私の身体を支えながら座らせる。
私はもうされるがままだった。
運転席に回った先生は、私のシートベルトを締めるとエンジンをかけ、すぐさま走り出す。

「あの、先生」
「ん? どうした」
「……いえ、何でもありません」

何かを言おうとしても何を言えばいいのかわからない。
先生の行動力に脱帽し、私は大人しく車に揺られていた。