私の運命の人

挙式のあとの披露宴では、楽しく和やかな雰囲気に包まれる。
私のいる円卓は正面に広香と橋口くん、右隣に三十木先生、左隣に坂井くんが座っていた。
三十木先生がそれぞれの近況を訊き、広香はグラフィックデザイナーとしてデザイン制作会社に勤めていること、橋口くんは柔道整復師の資格を取って医療機関で働いていること、そして坂井くんは大手総合商社の内定をもらったことを話す。

「えっ、じゃあ坂井くん、また東京に戻って来るの?」

思わず私は小声で尋ねた。

「そうだけど。何、嫌なの?」
「嫌じゃないけど、京都に残した彼女はどうするの?」
「そんな人いないから」
「できなかったの? 彼女」
「できたけど、三ヶ月で別れた」

ガクッと私は肩を落とす。

「三ヶ月は短すぎでしょ?」
「誰かさんの時よりは長いけど?」

うぐっと私は言葉に詰まった。

「そっちこそ、彼氏できたの?」
「そんな暇あるわけないよ。毎日必死なんだから」
「はい、言い訳」
「違うもん!」

すると広香が何やらニヤニヤとこちらの様子をうかがっているのに気づき、私は咳払いをしてから居住まいを正す。

「えっと、広香と橋口くんの結婚はいつなのかなー?」

軽く仕返しをしたつもりだったのに、あっさり「来年の春」と返事が来て私は見事にノックアウトされた。

「そ、そうなの!?」
「うん。結婚式の招待状送るから、出席してくれると嬉しい」
「それはもう、喜んで」
「ありがと。優里も素直に誰かにもらってもらったらいいのに。ねえ?」

広香に話を振られた橋口くんは、どうやら何もわかっていないらしい。

「え? 優里、誰かいい人いるのか? あ、もしや。三十路先生!?」
「まさか。それは三嶋さんに失礼ですよ」

三十木先生が冷静に答える。

「私はもう三十五歳です。あなたたちとは世代が違いますよ」
「じゃあ先生がおつき合いしてる人は同年代なんですか?」
「いいえ、誰ともつき合っていません。私は一生独身のつもりですから」
「それはまた、どうして?」
「想像つかないのです。誰かと家庭を築くということが」

私は黙って橋口くんと先生のやり取りを聞きながら、どこか寂しさを覚えていた。

(教師をやっているくらいだからきっと子どもは好きだろうし、将来自分の子どもを育てたいって気持ちもあると思うのに。どうしてそんな、諦めるようなことを?)

そうは思うが、踏み込んではいけないと私は口を閉ざした。