「優里、ほら行きな」
広香に背中を押されて私は躊躇する。
「やっぱり変に思われるよ」
「けど先輩、明日卒業しちゃうんだよ? 後悔しても遅いんだからね」
私と広香は高校の体育館の入口でさっきから押し問答をくり返していた。
「とにかく今は告白まではしなくていいから。あとでお話がありますって、それだけ伝えなよ。ね?」
そうこうしているうちに卒業式の予行が終わったようだ。
学年主任の「卒業生、退場」という声がマイクで聞こえてきた。
これから一組の男子、女子、二組の男子、女子、という順に先輩たちが退場してくる。
「ほら、友和先輩が先頭だよ」
少し顔を覗かせて中の様子をうかがった広香が手招きし、私は渋々入口に近づいた。
数人の足音がこちらに向かって段々大きくなる。
「ほら、行って来い!」
グイッと背中を押されて、私は入口の段差につんのめりながらも一歩踏み出した。
すぐ目の前に立ちはだかる背の高い人影を直視できず、両手をギュッと握りしめて口を開く。
「あの、よかったらあとでお話しさせてください!」
「……わかった」
低い声でそう返され、私はホッとして顔を上げる。
その瞬間、驚きのあまり固まった。
後ろで広香が「げっ、三十路……」と呟く。
「あとで社会科準備室に来なさい」
そう言うと三十木先生は私の横をスッと通り過ぎた。
「おっ、どうした優里。日本史のテストで赤点でも取ったのか?」
友和先輩が私の頭にポンと手をやってから「がんばれよ」と言い残して去って行く。
私は呆然としながらその場に立ち尽くしていた。
広香に背中を押されて私は躊躇する。
「やっぱり変に思われるよ」
「けど先輩、明日卒業しちゃうんだよ? 後悔しても遅いんだからね」
私と広香は高校の体育館の入口でさっきから押し問答をくり返していた。
「とにかく今は告白まではしなくていいから。あとでお話がありますって、それだけ伝えなよ。ね?」
そうこうしているうちに卒業式の予行が終わったようだ。
学年主任の「卒業生、退場」という声がマイクで聞こえてきた。
これから一組の男子、女子、二組の男子、女子、という順に先輩たちが退場してくる。
「ほら、友和先輩が先頭だよ」
少し顔を覗かせて中の様子をうかがった広香が手招きし、私は渋々入口に近づいた。
数人の足音がこちらに向かって段々大きくなる。
「ほら、行って来い!」
グイッと背中を押されて、私は入口の段差につんのめりながらも一歩踏み出した。
すぐ目の前に立ちはだかる背の高い人影を直視できず、両手をギュッと握りしめて口を開く。
「あの、よかったらあとでお話しさせてください!」
「……わかった」
低い声でそう返され、私はホッとして顔を上げる。
その瞬間、驚きのあまり固まった。
後ろで広香が「げっ、三十路……」と呟く。
「あとで社会科準備室に来なさい」
そう言うと三十木先生は私の横をスッと通り過ぎた。
「おっ、どうした優里。日本史のテストで赤点でも取ったのか?」
友和先輩が私の頭にポンと手をやってから「がんばれよ」と言い残して去って行く。
私は呆然としながらその場に立ち尽くしていた。



