私の運命の人

春休みが終わり、私は三年生に進級した。

「優里、おっはよー!」

教室に入る手前で広香に声をかけられ、私は振り返る。
二年生から三年生へは持ち上がりなので、広香や橋口くんとも同じクラスのままだ。

「おはよう、広香。席って二年の時と同じ?」
「そうみたい。代わり映えしないよねー」

窓際の一番後ろが私の席、その前が広香の席だった。
と言っても、おそらく始業式のあとのホームルームで席替えがあるだろう。
そして午後からは生徒会役員だけが残り、新入生の入学式を手伝うことになっていた。

「はい、みんな。おはよう」

時間になり、二年の時と同じ担任の瀬川先生が教室に入って来た。
まだ二十七歳の女性の先生で、小柄で可愛らしい。
最初は、思春期の男子生徒がなめてかかったらどうするのかと心配したけれど、サバサバした性格で女子からも男子からも慕われている。

「今年も一年、よろしくお願いします。高校生活もいよいよ最後。悔いのないように楽しみつつ、しっかり将来も見据えていきましょう。はい、では体育館へ移動!」

はーい、と皆で立ち上がり、ぞろぞろと廊下に出た。

「よっ、広香に優里。今日の入学式準備、よろしくな」

橋口くんが後ろからガシッと腕を回してきて、私と広香は同時に身をよじる。

「橋口、重いんだって。か弱い女子に体重かけないでよ。肩が折れちゃう」
「大丈夫だって」
「なんであんたが言うのよ?」

二人のいつもと変わらないやり取りに私は苦笑した。
橋口くんはどんな時でも「大丈夫だって!」が口ぐせで、私たちを安心させてくれる。
そして具体的な指示をしてくれるのが広香だ。
二人は生徒会長と副会長としてのバランスがいい。
おかげで私は、仕方なくやることになった生徒会役員の活動を無理なく楽しめていた。
立候補者がいなくてくじ引きでハズレを引いてしまった時は青ざめたけれど、今はアタリを引いたと思っている。

「橋口くん、新入生の生徒会役員もすんなり決まるといいね」
「おう。俺が熱烈歓迎のスピーチするから、大丈夫っしょ」

またもや頼もしい言葉が返ってきた。

「ドン引きされないように、ほどほどにね。ちゃんと空気読んでよ?」

広香が両腕を組みながら念を押す。
私たちは明日の新入生オリエンテーションで、生徒会の紹介と勧誘をすることになっていた。

「一年生か……。どんな子が入ってくれるんだろう」

そう呟くと、ふいに卒業していった友和先輩のことを思い出す。
私は結局何も伝えられずに先輩と別れてしまった。

(せめてお礼だけでもちゃんと言えればよかった。生徒会を楽しめたのも、先輩のおかげですって)

楽しい思い出をありがとう。それは幼い頃、いっくんにも伝えたかったこと。
自分できちんとピリオドを打たなければ、別れはこんなにも心に残ってしまう。
笑顔の日々が色褪せて見えてしまう。

(後悔しても遅いのに)

前を歩く広香と橋口くんの賑やかな会話を聞きながら、私は小さくため息をついた。